お役立ち情報
【なぜプールに塩素を?】入れる理由と微生物の繁殖抑制や感染症予防を解説
水質分析/各種環境分析

【なぜプールに塩素を?】入れる理由と微生物の繁殖抑制や感染症予防を解説

2025.04.14

  • プール水水質検査

この記事では、プールに塩素を入れる理由や目的、その効果について詳しく解説しています。実は、プールに塩素を入れることで、微生物の繁殖を抑制し、感染症を予防する重要な役割を果たしているのです。この記事を読めば、プールの水質管理の重要性と適切な塩素濃度の維持方法が理解できます。

プールには塩素が入れられていますが、その理由は何なのでしょうか?ここで言う「塩素」とは消毒を目的として入れる次亜塩素酸ナトリウムや二酸化塩素等の有効塩素を指しています。多くの人が利用するプールでは、水質管理が重要となります。よって、プールに塩素を入れる主な理由は、微生物の繁殖を抑制し、感染症を予防するためです。

プールには多くの人が入るため、さまざまな細菌やウイルスが持ち込まれる可能性があります。この点、塩素には強力な殺菌作用があるため、これらの有害な微生物を効果的に除去できるのです。

なぜプールに塩素を入れるのか

それでは、下記から順に一つずつ見ていきましょう。

  1. 塩素を入れる理由
  2. 塩素を入れる目的
  3. 塩素を入れないとどうなるか
  4. プール水の塩素濃度の規定

塩素を入れる理由

プールに塩素を入れる主な理由は、利用者の健康と安全を守るためです。不特定多数の人々が利用するプールでは、水質の衛生管理が日々の課題となっています。

第一に、塩素には強力な殺菌作用があります。プールを利用する人の中には、自覚なく病原菌やウイルスを持ち込む場合があります。

微生物は水中で急速に増殖し、感染症の原因となる恐れがあるため、塩素の殺菌作用でプールの水を安全な状態に保ちます。

また、プールの水は常に汚染のリスクにさらされています。利用者の汗や皮脂、化粧品の残留物などの有機物が水質を悪化させる要因です。 塩素はこれらの有機物を分解する働きを持っており、水の清潔さを維持するために重要な役割を果たしています。

塩素を入れる目的

プールに塩素を入れる目的は、水質を清潔に保つことです。

過去には、適切な消毒が行われていないプールで感染症が流行した事例も報告されています。そのため、塩素による継続的な水質管理は、プール施設の運営において欠かせない要素なのです。

具体的には、塩素は大腸菌やアデノウイルスなどの病原体を不活化させる能力があります。

塩素は長期間にわたって安定した消毒効果を発揮するため、定期的な添加によってプール水の品質を保つことが可能です。 塩素の代わりとなる消毒方法も存在しますが、効果とコスト、管理のしやすさのバランスから見ると、現在でも塩素処理がもっとも一般的な方法として広く採用されています。

塩素を入れないとどうなるか

プールに塩素を入れない場合、水質が急速に悪化し、利用者の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

塩素が不足すると、水中の微生物や細菌が増殖しやすくなり、大腸菌やレジオネラ属菌といった細菌類が繁殖します。

特に、屋外プールでは藻類が発生しやすく、水の濁りとともに悪臭も発生するでしょう。

一度藻が繁殖すると、通常の清掃では完全に取り除くことが難しく、プール全体の衛生状態を回復させるには多大な労力と時間が必要です。

家庭用プールであっても、同様に注意が必要です。少人数で使用する場合でも、大腸菌などの細菌は短期間で増殖するため、塩素による消毒を怠ると安全性が損なわれます。 このように、塩素はプール水の衛生を保つためには欠かせない物質なのです。

プール水の塩素濃度の規定

プール水の塩素濃度には明確な基準が設けられています。

学校のプールでは、学校環境衛生基準によってプール水の塩素濃度が管理されているのです。この基準では、塩素濃度を0.4mg/L以上、かつ1.0mg/L以下に保つことが定められています。0.4mg/Lという下限値は、病原菌やウイルスを60秒以内に効果的に不活化させるために必要な塩素濃度です。

一方、上限の1.0mg/Lは、利用者の肌や髪、目などへの刺激を考慮して設定されています。実は、水道水の塩素濃度基準は0.1mg/L以上と定められており、プールの塩素濃度は水道水と比較しても、特別に高いわけではありません。

日々、適切な塩素濃度を管理・記録することは、施設運営においてもっとも基本的かつ重要な業務です。

プールの塩素による影響

プールの塩素による影響として、次の4つが挙げられます。

  1. 微生物の繁殖抑制
  2. 感染しやすい病気の予防
  3. 肌荒れへの対策
  4. 髪の毛の傷みの対策

以下で順番に説明します。

微生物の繁殖抑制

プールに塩素を投入する目的は、水中での微生物の繁殖を抑制するためです。

塩素の持つ殺菌作用により、大腸菌やレジオネラ菌などの有害となる微生物を効果的に不活性化させられます。これらの微生物は、プール利用者の体から持ち込まれたり、外部環境から混入したりすることで水中に存在します。

塩素を適切な濃度で維持することで、これら雑菌の増殖を防ぎ、利用者間での感染症の拡大を防止できるのです。 塩素による殺菌は、単に雑菌を除去するのみならず、水の透明度を保ち、利用者に清潔な環境を提供する点でも重要な役割を果たしています。

感染しやすい病気の予防

プールに塩素を入れてもたらす効果は、水を介した感染症の効果的な予防です。学校やレジャー施設、ジムなどの不特定多数が利用する環境では、適切な塩素濃度の維持と浄化設備によるろ過が利用者の健康を守ります。

塩素消毒がないと、プールは以下のような感染症のリスクが高まります。

プール熱(咽頭結膜炎)はアデノウイルスが原因で、39度前後の高熱や、喉の炎症が特徴です。はやり目(流行性角結膜炎)も同じウイルスによるもので、角膜にも炎症が及ぶと視力障害を引き起こす可能性があるため、早期治療が必須です。エンテロウイルスが原因の急性出血性結膜炎では、結膜や眼瞼の充血に加え、白眼部分に出血が生じることもあります。

塩素の適切な管理は、これらの感染リスクを大幅に低減し、プール施設の安全性を高める不可欠な要素です。

肌荒れへの対策

プールに塩素を入れる必要性は理解できても、一方で肌への影響が気になる方も多いでしょう。結論、塩素は肌にダメージを与える可能性があります。中でも、敏感肌の方や免疫力の低い方は、特に注意が必要です。塩素は肌の角質層を傷つけ、乾燥を引き起こす原因となります。

水道水に含まれる残留塩素でも、同様のことがいえます。対策としては、プール利用後に塩素をしっかり洗い流し、適切な保湿ケアをすることです。セラミド配合の保湿剤には、肌のバリア機能を高める効果があります。ここで注意していただきたいのは、肌荒れを防ぐために保湿剤を塗ってからプールを利用しないことです。保湿剤はプールの水質を悪化させます。そうすることで、余計に塩素を投入することになり、悪循環が発生します。

肌荒れが気になる場合は、皮膚科医に相談することをおすすめします。

髪の毛の傷みの対策

プールの塩素による影響として、肌荒れに加え、髪への影響が気になる方も多いでしょう。

塩素は髪にも影響を与え、乾燥や枝毛、切れ毛の原因となることがあります。長時間プールに入ると、塩素によってキューティクルが劣化し、髪のタンパク質が変質します。すると、髪のツヤや滑らかさが失われてしまい、色も抜けやすくなるのです。

効果的な対策は、ゴム製のスイミングキャップを着用し、髪を塩素に長時間さらさないことです。また、プールから出た後は、シャワーやお風呂で髪をしっかりとすすぎ、塩素を洗い流しましょう。

さらに、プール後のヘアケアとして、保湿効果の高いトリートメントを使用することにより、髪の乾燥を防いで健康的な状態を保持できます。 ここでも同じように、プール利用前にヘアオイルやトリートメントを使用しないことが重要です。ヘアオイルやトリートメントは塩素を消費するほかに、有機物の量を増やしてしまうことで濾過器への負担も大きくなります。

プールから上がった後の注意点

ここからは、塩素による影響を最小限に抑えられるよう、正しいアフターケアをお伝えします。

プールから上がった後のシャワーでは、洗浄の方法に注意が必要です。塩素をしっかり落としたいからといっても、ゴシゴシと強く洗うのは逆効果です。塩素によって弱くなっている肌をさらに傷つけてしまいます。そのため、しっかりと泡立てて、やさしく洗うようにしましょう。

また、シャワー後のタオルケアでも、強くこすらず、押さえるように水分を吸収させるのが理想的です。その後、保湿ケアをすることで、塩素による乾燥から肌を守れます。

プール独特の臭いは塩素そのものが原因ではない

プールの利用者から「プール特有の臭いの原因は何なのか」という質問がよく寄せられますます。多くの人は、単に「塩素の臭い」と思い込んでいますが、実はそうではありません。

プールから漂う特徴的な臭いの正体は、塩素単体のものではなく、塩素がアンモニア性窒素と反応して生成される「クロラミン(クロロアミン)」という化合物です。この反応により、あの独特の「プールの臭い」を生み出しています。

アンモニア性窒素の主な発生源は、利用者の汗・尿・皮脂などの有機物質です。これらが塩素と反応することで、プール特有のいわゆる「塩素臭」や「カルキ臭」が発生します。汗や皮脂を持ち込まないためには、プールに入る前に、消毒槽で足を洗ったりシャワーを浴びることが効果的です。

とりわけ注目すべきは、プール内での排尿が臭いの発生に大きく関与していることです。特に、子どもたちには「プール内での排尿は禁止」と徹底する教育が重要です。

家庭用のプールは塩素量0.4~1.0mg/Lが目安

家庭用のプールの塩素量は、0.4~1.0mg/Lが目安です。 ここでは、次の2つについて説明していきます。

  1. 塩素を使用するとき
  2. 塩素以外の代替方法

それでは、詳しく見ていきましょう。

塩素を使用するとき

一般的な家庭用プールでは、基本的に塩素が不要な場合もありますが、特定の条件下では添加が推奨されます。特に、3人以上が同時に入るケースでは、衛生面のリスクが高まります。多くの利用者がいると、汗や皮脂などの有機物が水中に増え、微生物の繁殖環境が整いやすくなるためです。

このような状況では、適切な塩素濃度を維持することにより、感染リスクを大幅に低減できます。また、プールの水を数日間換えずに使用する場合も、塩素添加が効果的です。水の滞留時間が長くなればなるほど、細菌の増殖リスクは高まります。塩素は時間の経過とともに効果が減少するため、継続使用時には定期的な濃度チェックと追加が必要です。

家庭用プールで塩素を使用するに当たり、具体的な方法としては、市販の塩素製品を活用するのが一般的です。 製品の使用説明書に従い、適切な濃度となるように調整しましょう。

塩素以外の代替方法

塩素消毒剤以外では、家庭用プール向けの非塩素系除菌剤が出回っています。これらは塩素特有の刺激臭が少なく、肌への負担を軽減したい場合に適しています。プール専用の除菌剤は、薬局やホームセンターで購入可能です。

水質管理の確実性を高めたい場合は、残留塩素濃度試験紙との併用がおすすめです。適切な薬剤量を把握できるため、過剰投与による肌トラブルなどのリスクを回避できます。

一方、キッチン用の塩素系漂白剤や哺乳瓶消毒剤、ヨード系消毒液などの流用は避けるべきです。これらは濃度や成分がプール用途に適しておらず、安全性に懸念があります。

なお、薬剤使用に不安がある場合、もっとも安全な方法は、プールの水を毎日新しく入れ替えることです。

プールに塩素を入れる理由に関してよくある質問

ここでは、プールになぜ塩素を入れるのか、その理由に関してよくある質問に答えていきます。

  1. プールに塩素を入れないとどうなりますか?
  2. プールの塩素は肌に悪いでしょうか?
  3. 学校のプール用消毒剤の種類は?

それでは、以下で詳しく見ていきましょう。

プールに塩素を入れないとどうなりますか?

プールに塩素を添加しない場合、一週間以内に緑色の藻が発生し始めます。一度藻が発生したプールは、その後も繰り返し藻が発生しやすくなり、悪循環に陥ります。藻の胞子が残留してしまい、再繁殖の足がかりとなるためです。

また、微生物の増殖も大きな問題となります。塩素がない環境では、バクテリアやウイルスなどの病原体を制御できず、利用者間での感染症リスクが高まります。特に、複数人で利用する施設プールでは、この問題を見逃すことはできません。

また、水の濁りも進行し、水の透明度が低下します。これは、単なる見た目の問題のみならず、水中での視認性低下による安全面のリスクにもつながります。

プールの塩素は肌に悪いでしょうか?

プールの消毒に使用される塩素は、水の安全性を確保するための必須成分ですが、肌への影響については配慮が必要です。

塩素は水道水の消毒にも使われる物質で、適切な量であれば水中の有害な微生物から私たちを守ってくれます。しかし、塩素を含んだプールの水に長時間触れることにより、肌表面の保護層である皮脂が過剰に洗い流されてしまいます。肌本来のバリア機能が低下し、乾燥や肌荒れの原因となることがあるのです。

特に、敏感肌の方やアトピー性皮膚炎の方は、より影響を受けやすい傾向があります。 こうした影響を最小限に抑えるためには、プール利用後にすぐシャワーを浴びて塩素を洗い流し、保湿ケアをすることが効果的です。

学校のプール用消毒剤の種類は?

学校のプールで主に使用される塩素系消毒剤には、次亜塩素酸ナトリウム・次亜塩素酸カルシウム・塩素化イソシアヌル酸(トリクロロイソシアヌル酸・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムなど)の3種類があります。

これらには、いずれも水中で次亜塩素酸(HOCl)を生成し、強力な殺菌効果を発揮するという共通点があります。

ただし、施設の規模や設備に応じて、最適な製品形態は異なるでしょう。 連続注入装置用の液体タイプから直接投入可能な錠剤タイプまで、さまざまな形態が用意されています。

プール水の水質検査の必要性とご相談について

プールの安全と衛生を維持するためには、塩素管理だけでなく、定期的な水質検査が欠かせません。見た目がきれいでも、目に見えない細菌やウイルスが存在している可能性があります。水質基準に適合しているかを確認し、適切な管理・改善を行うことで、感染症のリスクを最小限に抑えることができます。

当社では、学校や施設、ジムなどさまざまな現場に対応したプール水の水質検査サービスを提供しています。検査項目や頻度、コストについてのご相談もお気軽にお問い合わせください。

プール水の水質検査について詳細はこちら

まとめ|プールに塩素を入れるのは微生物の繁殖抑制や感染症予防が目的

プールに塩素を入れる理由は、以下の3つです。

  • 塩素の殺菌作用でプールの水を安全な状態に保つ
  • 細菌やウイルスによる汚染のリスクを下げる
  • 利用者の汗や皮脂、化粧品の残留物などの有機物を分解して水の清潔さを維持する

プールの施設管理者は、微生物の繁殖抑制や感染症の防止対策として、水質管理を小まめに実施しましょう。

プール水水質検査の
ご相談はこちら

関連製品/サービス/検査メニュー