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水質汚染とは?3つの原因と日本の対策方法を紹介│現状把握し排水分析で防止しよう!
水質検査・分析/各種環境分析

水質汚染とは?3つの原因と日本の対策方法を紹介│現状把握し排水分析で防止しよう!

2026.02.10

  • 排水分析

「水質汚染とは具体的にどのような状態を指すの?」
「日本の河川や湖沼の水質汚染は現在どうなっている?」
「水質汚染を防ぐために何ができるのだろうか」
水質汚染について、このような疑問を抱いている方も多いかもしれません。

水質汚染は、産業排水や生活排水など、さまざまな原因によって引き起こされています。人間の活動から排出される汚染物質が、河川や湖沼の水質を悪化させるためです。特に、工場や事業場からの排水は、適切に管理しないと深刻な水質汚染につながりやすくなるでしょう。

そこで本記事では、水質汚染の現状や原因、効果的な対策方法を解説し、水質汚染を防止するために必要な水質検査や排水分析の重要性をお伝えします。 排水基準をしっかりと理解し、水質汚染のリスクを減らせるよう、ぜひ最後までご覧ください。

水質汚染とは?

水質汚染は、人間の活動によって河川や湖沼、海洋などの水質が悪化する現象のことです。工場からの排水や家庭からの生活排水、農業で使用される肥料・農薬が水域に流入することで発生します。汚染の程度は化学物質の濃度、有機物の量、細菌数、水の色や濁りなどの指標から判断されます。

水質汚染は、私たちの生活に直接的な影響を及ぼす深刻な問題です。汚染が進むと安全な水道水を確保できなくなり、魚介類の摂取にも制限が生じかねません。

実際、世界において一部地域では、汚染された水を使用せざるを得ない状況により、健康被害が発生しています。さらに、近年は地球温暖化の影響も加わり、水質汚染は世界規模で深刻化している環境問題の一つといえるでしょう。大切な水資源を守るため、早急な対策が求められています。

水質汚染の現状

日本周辺の海洋汚染は、依然として深刻な状況が続いています。海上保安庁の統計によると、令和6年に確認された海洋汚染は416件でした。昨年の397件と比べると19件増加しており、一昨年は468件であることからも、高止まりの傾向が見られます。

汚染の内訳を見てみると、油による汚染が286件で全体の約69%を占めています。次いで、廃棄物による汚染が102件で約25%です。これらの数値から、人間の活動が海洋環境に大きな負荷を与えていることは明らかでしょう。

特に注目すべきは「油」による汚染の原因です。船舶からの排出が178件あり、その中でも漁船からの排出がもっとも多くなっています。排出原因として「取り扱いの不注意」が最多を占めており、適切な管理体制の必要性が明確なものとなりました。

廃棄物による汚染では、陸上からの投棄が95件と大部分を占めます。現状を改善するためには、不法投棄の防止や啓発活動が不可欠です。

参考:海上保安庁「令和6年の海洋汚染の現状」

水質汚染に関する日本の基準

ここでは、水質汚染に対して環境省が示す基準を見ていきましょう。

①健康項目と基準値

健康項目では、人の健康に影響を及ぼす恐れのある物質が定められており、公共水域と地下水それぞれに全国一律の基準が設定されています。

健康項目基準値
カドミウム0.003mg/L以下
全シアン検出されないこと
0.01mg/L以下
六価クロム0.05mg/L以下
ヒ素0.01mg/L以下
総水銀0.0005mg/L以下
アルキル水銀検出されないこと
PCB検出されないこと
ジクロロメタン0.02mg/L以下
四塩化炭素0.002mg/L以下
塩化ビニルモノマー(地下水)0.002mg/L以下
1,2-ジクロロエタン0.004mg/L以下
1,1-ジクロロエチレン0.1mg/L以下
シス-1,2-ジクロロエチレン(公共用水域)0.04mg/L以下
1,2-ジクロロエチレン(地下水)0.04mg/L以下
1,1,1-トリクロロエタン1mg/L以下
1,1,2-トリクロロエタン0.006mg/L以下
トリクロロエチレン0.01mg/L以下
テトラクロロエチレン0.01mg/L以下
1,3-ジクロロプロペン0.002mg/L以下
チウラム0.006mg/L以下
シマジン0.003mg/L以下
チオベンカルブ0.02mg/L以下
ベンゼン0.01mg/L以下
セレン0.01mg/L以下
硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素10mg/L以下
フッ素0.8mg/L以下
ホウ素1mg/L以下
1,4-ジオキサン0.05mg/L以下

これらの基準値を超えた場合は、迅速な対策が求められます。

参考:環境省「水質汚濁対策」(健康項目)

②生活環境項目の水域類型

生活環境の保全について定められた生活環境項目は、河川・湖沼・海域ごとに利用目的に応じ「水域類型」を設けた環境基準です。

生活環境項目(公共用水域)河川湖沼海域
BOD≦1~10mg/L
COD≦1~8mg/L≦2~8mg/L
pH6.0~8.56.0~8.57.0~8.3
SS≦25~100mg/Lなど≦1~15mg/Lなど
DO2~7.5mg/L≦2~7.5mg/L≦2~7.5mg/L≦
大腸菌群数≦50~5,000MPN/100mL≦50~1,000MPN/100mL≦1,000MPN/100mL
n-ヘキサン抽出物質検出されないこと。
全窒素≦0.1~1mg/L≦0.2~1mg/L
全りん≦0.005~0.1mg/L≦0.02~0.09mg/L
全亜鉛≦0.03mg/L≦0.03mg/L≦0.01~0.02mg/L
ノニルフェノール≦0.0006~0.002mg/L≦0.0006~0.002mg/L≦0.0007~0.001mg/L
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩≦0.02~0.05mg/L≦0.02~0.05mg/L≦0.006~0.01mg/L

上の表の範囲内で水域の類型ごとに基準値を設定しています。

参考:環境省「水質汚濁対策」(生活環境項目)

水質汚染の主な原因は3つ

水質汚染の主な原因として挙げられるのは、以下の3つです。

  • 産業排水
  • 生活排水
  • 気候変動

それでは、一つずつ見ていきましょう。

①産業排水

水質汚染の原因の代表例が、工場や事業所から出る産業排水です。産業活動で使用された水に含まれる化学物質や有害成分が、河川や海へ流出することで水質汚染が起こります。

主な理由は、2つ挙げられます。まず、製造工程で使用された水が適切に処理されずに排出されるケースです。食品や日用品、洗剤などの生産には大量の水が欠かせません。しかし、必要な排水の一部には化学薬品が混じり、適切に処理されずに放流されると、水質汚染を引き起こしてしまいます。

次に、かつて操業していた工場跡地などに残留した有害物質が、土壌を通じて地下水に溶け込むケースです。地下水が川や海に流れ込み、飲料水にも影響を与える可能性があるでしょう。特に、カドミウムや水銀などの重金属類は、微量でも生物に深刻な影響を及ぼします。 過去には、産業排水が原因で「水俣病」や「イタイイタイ病」などの公害が発生しました。これらの公害は、適切な排水処理の重要性を示す事例です。現在は、法律によって排水基準が定められていますが、企業や自治体は継続的に監督する必要があります。

②生活排水

水質汚染の主な原因の一つに、私たちの日常生活から出る生活排水があります。家庭から流れる排水に含まれる汚れや化学成分が処理されず、そのまま河川や海へ流れてしまうと、水質が悪化する原因となるのです。

生活排水は「生活雑排水」と「し尿」に大別されます。生活雑排水はキッチンやお風呂、洗面所といった水回りから出る排水で、し尿はトイレからの排水です。なお、生活排水には洗剤・油・食材の残りかすなどが含まれ、生物分解しにくい成分が水質汚染を引き起こします。

特に注意したいのが、調理で使用した油の処理です。「このくらいなら大丈夫だろう」と思って流しに捨ててしまいがちですが、少量の油でも水質に大きな負荷を与えます。使用後の油はそのまま流さず、キッチンペーパーで拭き取る、もしくは市販の凝固剤で固めて可燃ごみとして処分することが重要です。

また、水質汚染を防ぐためには、自分たちが日常的に使用している洗剤や日用品の成分が、環境にどのような影響を与えるのかを知ることも欠かせません。便利さや価格だけで選ぶのではなく、環境負荷の少ない製品を意識的に選択する姿勢が求められます。「知らなかった」では済まされない時代だからこそ、一人ひとりの行動が水環境を守る大きな力になるのです。

農林水産省によると、令和6年度末の汚水処理人口普及率は93.7%に達しています(前年比0.4ポイント増加)。しかし、約780万人は依然として汚水処理施設を利用できず、特に人口の少ない地域では整備が進んでいません。人口による格差が、地域によって水質汚染リスクに差が出る一因にもなっています。

下水道や合併処理浄化槽といった整備が進むことで、水質改善は確実に進展しています。一方、油や洗剤を流さないなど、家庭での取り組みが欠かせません。生活排水を減らす意識が、水質汚染を防ぐ第一歩といえるでしょう。

参考:農林水産省「令和6年度末の汚水処理人口普及状況について」

③気候変動

気候変動は、水質汚染を加速させる大きな要因です。ここで、地球温暖化の仕組みを簡単に説明します。

地球は太陽エネルギーで温められており、地球の平均気温は14℃前後で保たれています。私たち人間や多くの生物が快適に暮らせるのは、適温に保たれているおかげです。

太陽光の熱は一部が宇宙へ放出され、残りは二酸化炭素やメタンガスといった温室効果ガスにより、大気中に蓄積されます。ただし、温室効果ガスが過剰に増加すると、吸収される熱量も増えて地球全体の気温が上昇します。これが「地球温暖化」の仕組みです。

それでは、地球温暖化が進むと水質にどのような影響があるのでしょうか。主に、次の3つの問題が生じます。

1つ目は酸性雨の発生です。酸性雨が河川や海へ多量に流入すると、水生生物の生態系を破壊してしまいます。2つ目として、温暖化の原因でもある森林破壊がさらに進行し、森林の水質浄化機能が低下します。3つ目に、アオコなどの植物プランクトンが異常発生し、水中の酸素濃度の低下につながり、水質を悪化させてしまうのです。

気候変動への対策は、水質保全にも直結する重要課題といえるでしょう。

参考:環境省「地球の現状と予測される将来」

日本の水質汚染対策

日本では水質汚染の対策として、以下の2つの法令が制定されました。

  • 水質汚濁防止法の制定
  • 湖沼水質保全特別措置法の制定

それぞれ見ていきましょう。

①水質汚濁防止法の制定

水質汚濁防止法は、1970年に制定された水質汚染対策の基となる法律です。

この法律が生まれた背景には、水俣病やイタイイタイ病といった深刻な公害問題があります。工場排水による健康被害が社会問題化したことを受け、排水規制を全面的に強化する必要性が高まったのです。そこで、国民の健康と生活環境を守ることを目的に、水質汚濁防止法が制定されました。

工場や事業場からの排出水については、3つの基準が設けられています。

基準内容
一律排水基準全国一律で適用される基準
上乗せ排水基準汚染源が集中する地域で一律基準より厳しく設定される基準
総量規制基準濃度規制だけでは環境基準達成が困難な特定水域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)において、汚濁負荷量の許容限度として適用される基準

水質汚濁防止法により、工場や事業場は基準値以下の濃度で排水することが義務付けられました。産業排水による汚染は大幅に改善されています。

生活排水対策も重要な水質汚染対策の柱です。都道府県が対策重点地域を指定し、浄化槽の設置推進や生活排水対策を実施しています。

参考:環境省「閉鎖性海域の水環境保全」

②湖沼水質保全特別措置法の制定

海や川と異なり、湖沼には水の流れがほとんどありません。湖沼は、一度汚染物質が流入すると蓄積しやすく、水質が回復しにくい特性を持っています。そのため、水質汚濁防止法だけでは、こうした閉鎖性水域の汚染を十分に防げませんでした。

そこで1985年に施行されたのが湖沼水質保全特別措置法です。この法律では、湖沼という特殊な水域を保全するため、以下の内容が定められています。

施策内容
湖沼の水質保全に関する施策目標達成に向けた具体的な施策や事業を盛り込んだ計画を策定
水質汚濁の原因となる物質を排出する施設への必要な規制湖沼の水質を汚す原因となる物を排出する施設に対し必要な規制

湖沼水質保全特別措置法により、湖沼への環境負荷が厳しく規制されるようになりました。下水道の整備や浄化槽の設置促進など、汚染物質の流入を防ぐ施策が推進されています。

先述のとおり、湖沼は一度汚染されると回復に長い年月を要します。そのため、湖沼には予防的な対策が有効であり、湖沼水質保全特別措置法はその役割を担っているといえるでしょう。

まとめ|水質汚染を起こさないために水質検査や排水分析を!

水質汚染は、私たちの生活環境と健康に深刻な影響を及ぼす問題です。「産業排水」「生活排水」「気候変動」という3つの原因が複雑に絡み合い、河川や湖沼の水質に影響を与えています。

企業や事業者にとって重要なのは、自社の排水が水質汚染の原因とならないよう、法令を踏まえた適切な管理を行うことです。井戸水の使用自体は直ちに問題となるわけではありませんが、使用方法や排水の扱いによっては、水質汚染や地下水汚染につながるリスクがあります。

特に注意すべきなのが、処理を行わずに地下へ浸透させる行為です。水質汚濁防止法では、有害物質を含む水の地下浸透を原則として禁止しており、意図せず地下へ排水が流入することでも、法令違反となる可能性があります。井戸水を使用する場合であっても、適切な処理を行ったうえで、下水道や定められた排水経路へ放流することが重要です。

水質汚染対策の基本となるのが、定期的な水質検査と排水分析です。検査を実施することで、排水の状態を客観的に把握でき、基準値を超える前に問題点を発見し、早期対応につなげることができます。

水質検査や排水分析をお考えの際は、アムコンまでご相談ください。当社は1979年から排水分析を実施している「法定登録検査機関」です。環境保全への積極的な取り組みは、法令順守だけでなく、企業としての信頼性向上にもつながります。本記事の内容を参考に、水質汚染の問題に正しく向き合っていきましょう。

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