「水道水がアルカリ性か酸性か分からない」
「pH値は適正範囲内なのか?」
水道水のpH値を測定したことがない方の中には、このような不安を抱く方も多いのではないでしょうか。
まずは、水道水について正しい知識を身に付けることが大切です。水道水がアルカリ性かどうかは、地域や水源によって大きく異なります。適切な知識を持つことにより、安全でおいしい水を飲むことができます。
水道水のpH値が水質基準によって規定されているのは、pHの変化に比較的容易に気づくことができること、そして基準値を超えた場合、健康への影響が懸念されるためです。特に、pH値が異常な水道水を長期間摂取すると、体調不良の原因となる可能性が考えられます。
そこで本記事では、水道水のpH値やアルカリ性の基本知識から、pH値が異常時の対処法まで、分かりやすく解説します。水道水の適正なpH値を理解し、水道水と硬度の関係性を正しく判断できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそもpHとは?
「pH」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。pHとは、水溶液の性質が「酸性」「アルカリ性」どちらなのかを示す指標です。具体的な数値として、0から14までの範囲で表されます。この数値は、水に溶けている水素イオン濃度によって決まります。
つまり、pHとは水素イオン濃度をもとに算出された指標なのです。pHの数値は7が中性、7より小さくなると酸性、7より大きくなるとアルカリ性になります。数値が7から離れるほど、その性質は強くなるということです。
具体的には、pH1は非常に強い酸性、pH14は非常に強いアルカリ性です。例えば、レモンやワインは酸性で、pHは1から6の間です。石鹸や洗剤はアルカリ性で、pH8から14の間に分類されます。小学校の理科の実験で使ったリトマス試験紙を思い出すと、分かりやすいかもしれません。
pH値は、私たちが飲む水道水の水質を判断する上で重要な指標です。水道水のpH値が基準値から外れると、給水設備の不具合や健康・生活に悪影響を及ぼす恐れがあるためです。
アルカリ性と酸性の水道水の特徴
水道水は地域や水源によって「アルカリ性」と「酸性」に分かれています。それぞれの特徴を理解することで、安全な水の利用へとつながるでしょう。
アルカリ性の水道水は、主に地下水を水源とする地域で見られます。ミネラル成分が豊富であり、まろやかな味わいが特徴です。一方、酸性の水道水は、河川水や湖水を水源とすることが多く、さっぱりとした口当たりです。 どちらも水道法で定められた基準値内であれば、安全に飲用できます。ただし、極端にpH値が高い、または低い場合は、水道管のような設備への影響や味の変化が生じる可能性があります。次に、アルカリ性と酸性の水道水について、それぞれの詳しい特徴を見ていきましょう。
アルカリ性の水道水の特徴
アルカリ性の水道水とは、pH値が7を上回る水のことです。地下水を水源とする地域で多く見られ、独特の特徴があります。
もっとも顕著な特徴は、まろやかで飲みやすい口当たりです。カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が豊富に含まれているため、自然な甘みを感じられます。このミネラル成分が、水の味わいに深みを与えているのです。
アルカリ性の水道水は、料理面において優れた効果を発揮します。野菜の煮物や豆類の下処理に使用すると、食材が柔らかく、仕上がりやすくなります。特に、アクの強い野菜をゆでる際には、アルカリ性の性質がアクを中和し、色鮮やかな仕上がりに期待できるでしょう。 また、お茶やコーヒーを入れる際にも、特徴的な変化が現れます。渋みや苦みが和らぎ、まろやかな味わいとなる傾向にあるのです。一方、紅茶の色が濃く出にくくなるという一面もあります。
酸性の水道水の特徴
酸性の水道水とは、pH値が7未満の水のことです。河川や湖を水源とする地域で多く見られ、さっぱりとした飲み口が特徴です。
味わいについては、すっきりとした清涼感があります。ミネラル分が比較的少ないため、クセがなく、飲みやすいと感じる方も多いでしょう。また、のどごしが軽やかで、運動後の水分補給にも適しています。
料理への影響に関しては、酸性ならではの独特な効果を発揮します。酸性の水には、肉や魚の臭みを取り除く作用があり、下処理に活用することが可能です。また、野菜をゆでる際には、色が鮮やかに仕上がりやすく、特に緑色野菜の発色が良くなる傾向にあります。
お茶やコーヒーを入れる場合、紅茶は美しい色合いに抽出されやすくなります。一方、緑茶では渋みが強く出やすいため、温度調整に注意しましょう。
また、配管への影響については注意が必要です。酸性度が強すぎると、金属配管の腐食を進める可能性があります。特に、鉄や銅製の配管では、長期間にわたって使用すると、劣化が早まることがあります。 水道水の酸性化は、酸性雨の影響や、浄水処理過程での塩素処理が原因となることもあります。そのため、定期的な水質検査により、適切なpH値が維持されているか確認することが重要です。
水道水におけるpHの基準は5.8~8.6
水道水のpH値は、水道法によって「5.8~8.6」と定められています。この基準となる範囲は、弱酸性から弱アルカリ性までを含み、安全な飲用水として供給するための重要な指標です。
それでは、なぜこれほど幅広い範囲が設定されているのでしょうか。その理由は、水源の違いにあります。前述のとおり、地下水を利用する地域ではアルカリ性になりやすく、ダムや貯水池の水を使用する地域では酸性を示すことが多いのです。
また、浄水処理過程で使用される消毒剤も、pH値に影響を与えます。次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系消毒剤は、水のpH値をわずかにアルカリ性へと傾ける性質があるためです。
pH値の基準は、国際的にも妥当とされており、WHO(世界保健機関)の基準とも整合性が取れています。浄水場では24時間体制でpH値を監視し、基準を超えることがないよう厳格に管理されているのです。 家庭で水道水を沸騰させると、溶解していた二酸化炭素が除去され、pH値が上昇することがあります。しかし、これが健康への影響を生じることはありません。むしろ、沸騰によって消毒効果が失われるため、早めに消費することが推奨されます。
水道水におけるpHの最適値は7~8程度
水道水がアルカリ性なのか注目している多くの方は「どの程度のpH値が最適なのか」という点が気になるでしょう。結論から述べると、飲料水として最適とされる水道水のpH値は7~8、すなわち中性から弱アルカリ性の範囲です。これは、東京都水道局を始め多くの水道事業者が推奨している値であり、水道法でもpH5.8~8.6の範囲で管理されています。
なぜpH7~8が理想なのかと言うと、まず人間の体液のpH値が約7.4の弱アルカリ性であるためです。この範囲の水は口当たりがよく、体への負担も少ないと考えられています。また、酸性・アルカリ性どちらかに大きく偏ると、配管などの設備が腐食したり、水の味や色・臭いに悪影響を及ぼしたりするリスクが高まります。
特に、水道水が中性から弱アルカリ性に保たれていれば、金属製の管の腐食を抑え、殺菌効果も安定しやすいです。反対に、基準を逸脱すると、設備の老朽化や衛生面でのリスクが増加します。そのため、pH7~8に調整することにより「安全」「快適」「おいしい」といった条件を満たす水道水を維持できます。 従って、日常生活で水道水のアルカリ性を気にする際も、このpH7~8の数値を守っているかが、もっとも重要なポイントです。
pH値と硬度に関係性はない
水質を語る際によく混同されるのが、pH値と硬度の関係です。しかし、この2つの指標はまったく別の概念であり、直接的な関係性はありません。
pH値は水素イオン濃度を示し「酸性」「中性」「アルカリ性」を表す指標です。一方、硬度はカルシウムイオンとマグネシウムイオンの含有量について、炭酸カルシウム換算で表したものです。つまり、測定している成分そのものが異なります。
例えば、硬水でもpH値が酸性を示すことがあり、軟水がアルカリ性となることもあります。硬度が高いからと言って、pH値が必ずアルカリ性となるわけではないでしょう。
硬度には「硬水」と「軟水」の2種類があります。硬水はミネラル豊富で独特の味わいがありますが、飲み過ぎると消化器への負担となるため注意が必要です。渋みを感じる人も多いでしょう。一方、軟水はさっぱりとした口当たりで飲みやすく、日本の水道水の多くが軟水に分類されます。 水道水の品質管理では、pH値と硬度は別々に測定・管理されています。それぞれで異なる役割を持つ重要な指標として、適切な範囲に保たれているのです。
水道水にpH値の異常が起こった際の解決策
原則として、水道水のpH値に異常が起こることはめったにありませんが、ここからは実際に起きた事例をご紹介していきます。
東京都健康安全研究センターの調査では、ある高校で給水栓からの水がpH8.9~9.1と、基準値(5.8~8.6)を超えた事例が報告されました。この高校は水道本管の最末端にあり、本管は古いモルタルライニング管で、末端に滞留した水に劣化したモルタルからアルカリ成分が溶出し、水がアルカリ性に傾いたと推定されています。
対策として、水道局は管末端にバルブを設置し、水道水をすべて排出しました。その結果、pHは7.2~7.4の正常範囲に戻りました。このように、水道水のpH値に異常が起こった場合は、原因調査と速やかな処理が重要です。普段から定期的なpH測定で異常を早期発見し、専門家へ相談することが推奨されます。 なお、弊社には専門的な知識と技術を持つ分析技術者が在籍しています。水道水の水質検査に関してお困りごとなどありましたら、ぜひご相談ください。
まとめ|安全安心な水道水の利用には水質検査を!
水道水のpH値は、水溶液が酸性かアルカリ性かを示す指標です。0~14の数値で表され、7が中性となっています。水道水のpH値は、地域や水源によって異なり、水道法によって5.8~8.6の範囲が基準と定められています。なお、飲料水として特に最適とされるpH値は、人間の体液に近い7~8の中性から弱アルカリ性の範囲です。
アルカリ性の水道水は主に地下水が水源で、まろやかな口当たりと豊富なミネラルが特徴です。料理では野菜を柔らかくしたり、お茶やコーヒーの苦みを和らげたりする効果があります。一方、酸性の水道水は河川や湖水が水源で、さっぱりとした飲み口が特徴です。肉や魚の臭みを取ったり、緑色野菜の色を鮮やかにしたりする効果が期待できます。
ただし極端にpH値が高い、または低い水は、配管の腐食や味の変化を引き起こす可能性があります。また、pH値と硬度(カルシウムやマグネシウムの含有量)は、直接的な関係がない別々の指標です。
安全で安心な水道水を利用するためには、適切な水質管理が欠かせません。
当社は、水質検査に関する豊富な経験と確かな技術力を持ち、お客様の水道水に関するさまざまな課題に対応してきました。
定期的な水質検査を通じて安全で快適な水環境をご提供します。水道水の品質維持のために、ぜひ弊社の水質検査サービスをご検討ください。
