ビル管法(ビル管理法、建築物における衛生的環境の確保に関する法律)における水質検査の項目は、用途や検査頻度によって異なるため、分かりにくい部分があります。ただし、適切な項目で検査しなければ、法令違反となるリスクがあります。ビル管法の水質検査は、建物利用者の健康を守るために義務付けられた検査だからです。
そこで本記事では、水質検査の概要をはじめ、ビル管法における水質検査の項目、水質検査の必要性、専門機関への依頼方法まで解説します。 法定登録検査機関に依頼すれば、建物の用途や水源の種類に応じて適切な水質検査をしてもらえるため安心です。
水の用途に応じた検査頻度を理解し、適切に水質検査が実施できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
目次
水質検査の概要
水質検査とは、水の色やにおい、有害な化学物質や細菌の有無などに関して、法定水質基準に該当しているかを判定するものです。まずは、水質検査の目的と適用される法律をご紹介します。
水質検査をする目的
水質検査の目的は「利用者の健康を守ること」です。特定建築物では、多くの人が利用することから、供給する水の安全性が重要です。また、定期的に水質検査を行うことで、給水設備の異常や水質の変化にも早期に気づくことができ、重大なトラブルを未然に防ぐことにつながります。
水道水に病原菌が混入していれば、飲用として危険なことはもちろん、手洗いや入浴などで接触した人にも、健康被害が及ぶ恐れがあります。実際、過去には貯水槽の管理不備により、O157などの病原性大腸菌が検出された事例が報告されています。
井戸水や湧き水を水源とする場合、衛生管理が不十分だと、下痢を引き起こす大腸菌やカンピロバクターなどの菌が検出されるリスクが高まります。
これらのことから、水の事故を未然に防ぐために定期的に水質検査を実施し、水質の安全を管理することが特定建築物所有者や管理者の義務です。水質検査を適切に実施することにより、利用者は安心して水を使い、健康的に過ごせる環境を維持できるでしょう。
水の用途別に適用される法律
日本では、水の安全性を確保するため、用途ごとに異なる法律で水質検査を義務付けています。
- 飲料水:水道法、食品衛生法、建築物衛生法(ビル管法)など
- プール・公衆浴場:学校保健安全法、公衆浴場法など
- 地下水・河川・湖沼:環境基本法、水質汚濁防止法など
上記からも分かるように、検査義務を負う主体も水の用途で異なるのが特徴です。水道水であれば水道局などの水道事業者が検査義務を負い、公衆浴場や複合ビルでは施設管理者が責任を持ちます。管理者は、専門の検査業者へ委託することで義務を果たしています。
中でも、水道法は私たちが日常的に利用する飲料水を守る上でも、特に重要な法律といえるでしょう。
ビル管法での水質検査項目
ビル管法での水質検査項目には、下記が挙げられます。
【飲料水】
- 16項目の水質検査
- 11項目の水質検査(前回検査で基準に適合したケース)
- 消毒副生成物の12項目の水質検査
- 地下水を水源にしている7項目の水質検査
※貯湯槽がある建物では、飲料水の検査対象に給水系統だけでなく給湯系統も含まれます。
【飲料水以外】
- 雑用水の水質検査
16項目の水質検査
ビル管法では、厚生労働省が定める基準項目(全51項目※)のうち、16項目の水質検査を義務付けています。6カ月以内に1回の頻度で実施し、各項目が基準値を満たしているかの確認が必要です。検査項目と基準は、以下のとおりです。
※2026年4月よりPFASが追加となり全52項目になります。
| 検査項目 | 基準 |
|---|---|
| ①一般細菌 | 100個/mL以下 |
| ②大腸菌 | 検出されないこと |
| ③鉛及びその化合物 | 0.01mg/L以下 |
| ④亜硝酸態窒素 | 0.04mg/L以下 |
| ⑤硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 | 10mg/L以下 |
| ⑥亜鉛及びその化合物 | 1.0mg/L以下 |
| ⑦鉄及びその化合物 | 0.3mg/L以下 |
| ⑧銅及びその化合物 | 1.0mg/L以下 |
| ⑨塩化物イオン | 200mg/L以下 |
| ⑩蒸発残留物 | 500mg/L以下 |
| ⑪有機物(全有機炭素「TOC」の量) | 3mg/L以下 |
| ⑫pH値 | 5.8以上8.6以下 |
| ⑬味 | 異常でないこと |
| ⑭臭気 | 異常でないこと |
| ⑮色度 | 5度以下 |
| ⑯濁度 | 2度以下 |
検査した結果、基準に適合しない項目が見つかった場合、ビル管理者には速やかに改善措置を講じる義務があります。
11項目の水質検査(前回検査で基準に適合したケース)
16項目の水質検査を実施した後は、6カ月以内ごとに定期検査を行う必要があります。ただし、前回の検査で全16項目が基準を満たしていた場合に限り、次回の検査では以下5項目の省略が認められています。これら5項目は、配管材質などの影響を受けやすく、短期間で大きく変動しにくい項目とされているためです。
- ③鉛及びその化合物
- ⑥亜鉛及びその化合物
- ⑦鉄及びその化合物
- ⑧銅及びその化合物
- ⑩蒸発残留物
省略された場合は、残る11項目のみの検査となります。なお、この省略は次の検査1回にのみ適用されます。その次の検査では再び16項目すべてを検査しなければなりません。基準に適合した実績があっても、定期的に全項目を確認することにより、水質の安全性を継続的に保っています。
消毒副生成物12項目の水質検査
基本の16項目に加え、毎年1回の検査が義務付けられている12項目の水質検査があります。これは「消毒副生成物」と呼ばれる物質の検査です。消毒副生成物とは、水道水の塩素消毒時に塩素と有機物が反応して生成される物質を指します。生成量は水温や有機物の量、滞留時間、残留塩素量などに左右されるのが特徴です。
なお、検査は毎年6月1日~9月30日の間に実施すると定められています。この時期は水温が高くなりやすく、消毒副生成物が発生しやすいためです。検査項目と基準は、以下のとおりです。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| ①シアン化物イオン及び塩化シアン | 0.01mg/L以下 |
| ②塩素酸 | 0.6mg/L以下 |
| ③クロロ酢酸 | 0.02mg/L以下 |
| ④クロロホルム | 0.06mg/L以下 |
| ⑤ジクロロ酢酸 | 0.03mg/L以下 |
| ⑥ジブロモクロロメタン | 0.1mg/L以下 |
| ⑦臭素酸 | 0.01mg/L以下 |
| ⑧総トリハロメタン | 0.1mg/L以下 |
| ⑨トリクロロ酢酸 | 0.03mg/L以下 |
| ⑩ブロモジクロロメタン | 0.03mg/L以下 |
| ⑪ブロモホルム | 0.09mg/L以下 |
| ⑫ホルムアルデヒド | 0.08mg/L以下 |
消毒副生成物は、微量でも人体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、毎年の定期検査が必要です。
地下水を水源にしている7項目の水質検査
ビルの水源に地下水を使用している場合、さらに7項目の検査が必要です。7項目の検査は、水源の全てが地下水の場合のみならず、一部のみ使用している場合にも適用されます。ただし、検査の実施は3年以内に1回と、通常の検査よりも頻度の少ない点が特徴です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| ①四塩化炭素 | 0.002mg/L以下 |
| ②シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2-ジクロロエチレン | 0.04mg/L以下 |
| ③ジクロロメタン | 0.02mg/L以下 |
| ④テトラクロロエチレン | 0.01mg/L以下 |
| ⑤トリクロロエチレン | 0.01mg/L以下 |
| ⑥ベンゼン | 0.01mg/L以下 |
| ⑦フェノール類 | フェノールの量に換算して0.005mg/L以下 |
初めて地下水を使用する際には、給水前に厚生労働省の水質基準51項目※の検査が義務付けられています。
※2026年4月よりPFASが追加となり全52項目になります。
飲料水以外の雑用水の水質検査
雑用水とは、飲用以外の目的で使われる水のことです。清掃やトイレの洗浄、植木の水やりといった用途で使用されており、再生水・雨水・工業用水などを利用しています。限られた水資源の有効利用の観点から、雑用水の活用は効果的です。
ビル管法では、雑用水にも水質基準を設けており、定期的な検査が義務付けられています。ただし、雑用水に水道水を利用する場合は、検査の対象外となります。検査項目と基準は、以下のとおりです。
| 項目 | 基準 | 散水・修景・清掃用水の検査頻度 | 水洗便所用水の検査頻度 |
|---|---|---|---|
| pH値 | 5.8以上8.6以下 | 7日以内ごとに1回 | 同左 |
| 臭気 | 異常でないこと | 7日以内ごとに1回 | 同左 |
| 外観 | ほとんど無色透明 | 7日以内ごとに1回 | 同左 |
| 大腸菌 | 検出されないこと | 2カ月以内ごとに1回 | 同左 |
| 濁度 | 2度以下 | 2カ月以内ごとに1回 | ― |
| 遊離残留塩素 | 0.1mg/L以上* | 7日以内ごとに1回 | 同左 |
*著しい汚染の恐れがある場合などは0.2mg/L以上とする
また、雑用水槽の点検も併せて行い、安全な水質の状態を維持しましょう。
ビル管法で水質検査が必要な理由
ビル管法では、建物利用者の健康を守ることを目的として、水質検査の実施が義務付けられています。特定建築物では、給水設備や水質を適切に管理することが求められており、法定の水質検査に加え、日常的な点検と記録の実施が必要です。ビル管法施行規則第4条では、貯水槽の内外の状況や給水栓における水の外観などについて点検し、その結果を記録することが定められています。
また、平成14年の法改正により、飲用以外の生活用水についても利用者の健康に配慮した水質管理が求められるようになり、施行規則第4条の2の新設によって、雑用水を供給する場合の健康被害防止基準が追加されました。
給水設備に関する自主点検記録の提出については、自治体の運用により異なる場合がありますが、記録の作成・保存は原則として義務とされています。
水質検査や管理を怠った場合、所轄の保健所から指導や改善命令が出される可能性があり、是正されない場合には罰則の対象となることもあります。さらに、水質が原因で利用者に健康被害が発生した場合、建物所有者や管理者の責任が問われるおそれもあります。こうしたリスクを避けるためにも、定期的な水質検査の実施は欠かせません。
水質検査を専門機関に依頼するには
ここまで水質検査の義務や必要性を解説してきましたが、実際に水質検査を専門機関へ依頼するには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、依頼前の準備と検査機関の選定という2つの観点から解説します。
専門機関へ依頼する際は、事前準備と業者選定が重要です。まず、建物で使用している水の水源(水道水か地下水か)や、用途(飲料水・生活用水・雑用水など)を整理し、ビル管法で求められる検査項目を把握しておきましょう。これにより、必要な検査内容を過不足なく依頼できます。
水質検査は誰が行うのか
ビル管法では、水質検査の実施が義務付けられていますが、検査作業を行う者を特定の資格者に限定しているわけではありません。実務上は、水道法第20条に基づく登録検査機関や、ビル管法に基づく水質検査業登録業者など、法令に基づき登録された専門機関へ水質検査を依頼します。重要なのは、水質検査を適切に実施し、その結果が法令の基準に適合していることです。
特定建築物では、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)を選任し、建物全体の衛生管理を統括させる必要があります。ビル管理士は、水質検査の実施状況や結果を確認・管理する責任者であり、検査業務そのものを必ず自ら行う立場ではありません。 実務上は、検査設備や分析体制、法令対応の面から、水質検査を専門とする外部機関へ依頼するケースが一般的です。
専門機関を選定する際のポイント
ビル管法では、建築物の衛生環境を保つための業務を行う事業者を「建築物事業」として、都道府県知事または政令指定都市の長の登録制度で管理しています。このうち、水質検査を専門に行う事業者は「建築物飲料水水質検査業」として登録されています。
水質検査を依頼する際は、こうした都道府県知事または政令指定都市の長の登録を受けた検査機関を選定することで、信頼性の高い検査結果を得ることができます。登録事業者の一覧は、各都道府県の公式サイトで確認可能です。
アムコンは「建築物飲料水水質検査業」の登録事業者です。ビル管法に基づく定期水質検査はもちろん、地下水や雑用水を使用している建築物にも対応しています。
建物の用途や水源に応じた適切な検査方法についてもご提案可能です。水質検査をご検討中の方は、まずはお問い合わせフォームよりご相談ください。
水質検査を専門機関に依頼する手順
専門機関へ水質検査を依頼する手順は、以下のとおりです。
1つ目は、検査機関が現地を訪問して水のサンプルを採取し、後日検査結果を受け取る方法です。2つ目として、専門機関から提供された専用容器を使い、ビル管理者が採水して検査機関へ持ち込む方法もあります。3つ目は、同様に管理者が採水し、検査機関へ送付する方法です。
ビル管法では、6カ月ごとに1回といったように、定期的な検査が義務付けられているため、送付対応できる専門機関を選ぶと利便性が高いでしょう。
採水時には、清潔な容器の使用と正しい手順の順守が必要です。水栓を数分間流した後に採水したり、採取後は容器を確実に密閉したりすることが求められます。なお、採水後は適切な温度管理下で保管し、速やかに検査へ回しましょう。
採水方法の例はこちら
簡易検査キットは、測定項目が限定されており、自社の実施では検査結果報告書が発行されないことから、検査結果の信ぴょう性が低いです。ただし、水質変化の早期発見には有効なため、日常的な監視手段としては活用できます。基準値を超える兆候が見られた際は、速やかに法定登録検査機関へ正式な検査を依頼しましょう。
まとめ|ビル管法での水質検査は法定登録検査機関に
ビル管法における水質検査は、建物利用者の健康を守るために欠かせない法的義務です。
検査項目は水源や用途によって異なり、通常の飲料水では16項目または11項目、地下水利用時は7項目の追加検査、雑用水では独自の基準が適用されます。これらの検査を定期的に実施すると、安全な水質環境を維持できるでしょう。
また、水質検査は専門性が高く、正確な測定と信ぴょう性のある報告書が求められます。そのため、都道府県に登録された法定登録検査機関への依頼が確実な方法です。
アムコンでは、ビル管法に基づく水質検査を含め、建築物の衛生管理をサポートしており、専門スタッフが丁寧に対応いたします。水質検査を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
検査のご依頼から完了までの流れは、以下で詳しく説明しています。https://www.suisitubunseki.com/case/flow.html