建築設備定期検査についてご存じでしょうか。建築設備定期検査の検査内容や検査頻度などについてご紹介いたします。また、建築設備定期検査の必要性や、マンション・オフィスビルなどで建築設備定期検査が必要な設備についてもご紹介しています。
建築設備定期検査とは?
建築設備定期検査とは、建築基準法第12条第3項で定められた、建築設備の法定点検で、建物内に設置されている設備が安全・快適に使用できる状態にあるかどうかを定期的に検査する検査です。
建築設備定期検査は、同じ建築基準法第12条で制定されている「特定建築物調査」と名称が似ている為、混同されやすい検査ですが、検査及び調査の対象にそれぞれ違いがあります。建築設備定期検査は、建物の設備が調査対象となり、給排水設備や換気設備などを検査します。対して特定建築物調査は、建物そのものが対象の為、敷地や外壁、床や天井、屋上や避難施設などが対象となるなどの違いがあります。
建築設備の定期的な検査を行うことで建物の適正な管理が続けられ、居住者の安全性と快適性が維持されます。また、不測の事態を事前に防止し、建物の耐用年数を延ばすことにもつながります。
建築設備定期検査が必要な理由
建築設備定期検査の必要性は、劣化や故障リスクの軽減と常に安定した環境の提供にあります。 設備が正常に動作しないまま放置されると、火災、漏電、水漏れなどの問題が発生する恐れがあります。これらのリスクを防ぐためには、計画的な点検が不可欠です。
検査項目 | 頻度 | 注意点 |
排煙設備 | 年1回 | 腐食等の状態、設置状況、作動異常の確認 |
給排水設備 | 年1回 | 水漏れの兆候や配管の詰まり |
換気設備 | 年1回 | フィルターの詰まりや動作音 |
非常用照明装置 | 年1回 | 点灯確認や停電時の最低限の照度確保の確認 |
検査対象となる建築設備
ここでは実際に定期検査の対象となる建築設備をご紹介します。
排煙設備
排煙設備は、火災時に発生する煙を建物外に排出し、避難経路を確保するための重要な防災設備です。
火災が起きた際、一酸化炭素が発生し、一酸化炭素中毒による死亡事故をニュース等で耳にされたことのある方も多いと思います。そのようなことが起きないように排煙設備の検査が非常に重要となっています。
1.検査対象
- 機械排煙設備
- 自然排煙設備
- 排煙口、排煙窓
- 排煙機
- 排煙ダクト
- 制御盤
2.主な検査内容
- 排煙口の開閉および作動状態
- 排煙機の性能
- 排煙ダクトの損傷、腐食の有無
- 連動制御の確認
- 予備電源の状態
給排水設備
給排水設備は、建物内部の生活インフラの重要な要素です。水道水の供給と、使用済み水の安全な排水を可能にするこのシステムは、人々の生活品質に直結します。
建物の利用者に衛生的な飲料水と、正常な排水機能を維持することで安心安全な生活を提供することができます。もしもこの検査に漏れがあり、設備の異常を見逃してしまうと、建物利用者は汚染された水を口にしてしまう恐れも生じます。そのため非常に重要な検査です。
1. 給水設備の主な検査内容
①受水槽・高置水槽
- 水槽の損傷、漏水の有無
- 防水材の劣化状態
- 通気管・オーバーフロー管の状態
②給水ポンプ
- 作動状態の確認
- 異常音・振動の有無
- 自動運転制御の確認
③配管設備
- 漏水、腐食の有無
- 支持金物の固定状態
- 受水槽の定水位弁などの作動確認
2. 排水設備の主な検査内容
①排水槽・汚水槽
- 槽本体の損傷確認
- 防水層の状態
- 通気管の詰まり確認
②排水ポンプ
- 作動状態の確認
- フロートスイッチの動作
- 自動運転の確認
③排水管
- 漏水、詰まりの有無
- 継手部の状態
- 通気管の状態
換気設備
換気設備は、室内の空気を入れ替える為の設備で、原則としてすべての建物への設置が義務付けられています。新鮮な空気に保つために外気より室内に空気を送り込む役割を担う大切な設備であり、室内の利用状況によっては粉じんや有毒ガス、臭気などが発生する事もありますが、喚起する事で汚染物の濃度を下げる事が出来ます。
もしも換気設備に異常が生じていた場合、人体に有毒な一酸化炭素が換気されず、人命にかかわる事態に陥る可能性もあり、重要な設備です。
また効率的な空調・換気の運用は、エネルギー消費の削減にもつながります。
1.検査対象設備
- 機械換気設備
- ダクト設備
- 換気口、吸気口
- 制御装置
- フィルター
2. 換気設備の主な検査内容
①換気扇・送風機
- 運転状態の確認
- 異常音・振動の有無
- 回転方向の確認
- 電流値・電圧値の測定
- ベルトの緩み・摩耗
②ダクト設備
- 接続部の緩み
- 漏気・損傷の有無
- 支持金物の固定状態
- 防火ダンパーの作動確認
- 清掃状況
③換気口・吸気口
- 開閉機能の確認
- 目詰まりの有無
- 固定状態の確認
- 損傷・腐食の有無
非常用照明装置
非常用の照明装置は、災害時などによる停電時に臨時で点灯する照明装置で、緊急時の避難をスムーズに行えるようにする為の設備です。
1. 検査対象
- 非常用照明器具
- 蓄電池設備
- 自家発電設備(設置されている場合)
2. 非常用照明設備の主な検査内容
①照明器具
- 点灯状態の確認
- 器具の損傷・腐食
- 取付状態
- 予備電源への切替え確認
- 照度測定
②バッテリー
- 容量確認
- 劣化状態
- 充電状態
- 非常時の作動時間確認(30分以上)
建築設備の定期検査は年に何回するべき?
特定建築物において、建築設備の定期検査は必須の検査であり、適切な頻度で行うことが需要です。
法律で定められた検査頻度と報告
建築基準法第12条第3項に基づき、特定建築物は原則として1年に1回の検査・報告頻度を守ることが法律で義務付けられています。
また、具体的な施設やその用途によっても頻度や検査項目が異なることがあります。検査対象の建物、報告書の提出先や提出方法等含め、詳しくは各特定行政庁に確認が必要です。
検査頻度を守ることによるメリット
法律で定められた頻度とそれ以上の適切な間隔で定期検査を行うことで、設備の長寿命化とコスト削減を見込めます。突発的な故障を未然に防ぐと同時に、消耗している部品を早期に交換することが可能になるため、長期的には維持費の低減に繋がります。
また、事故や故障のリスクが低減されることで、施設利用者にとっても安心・安全な環境を提供できます。
建築設備定期検査の費用
建築設備の定期検査を行う際には、費用を慎重に検討することが重要です。費用面をしっかりと把握しておくことで、計画的に検査を進めることができます。
平均的な検査費用
定期検査にかかる費用は、多くの要因によって異なりますが、特に注目すべきは建築物の規模と設置されている設備の種類です。大規模な商業施設や高層ビルでは、その分設備も多種多様であるため、費用が増加する傾向があります。
以下の一般的な建築基準法における12条点検の費用相場は、建物の規模や設備により異なります。表示価格よりも超える事もございますため、必ず事前の調査と見積を取ることをお勧めいたします。
延床面積 | 集合住宅など | オフィス・テナントビルなど |
---|---|---|
~1,000㎡ | 約3万円~5万円 | 約4万円~6.5万円 |
1,001㎡~2,000㎡ | 約3.5万円~6.5万円 | 約5万円~7.5万円 |
2,001㎡~3,000㎡ | 約4万円~7.5万円 | 約6万円~8.5万円 |
3,001㎡~ | 約7万円~ | 約8万円~ |
よくある質問
建築設備定期検査について、よくある質問をご紹介します。
定期検査には罰則があるのか?
法的検査ですので行わないと罰則が発生します。罰則の詳細については建築基準法に以下の罰則規定が記載されています。
第101条 「次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の罰金に処する」二項 第12条第1項又は第3項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
引用:建築基準法
定期検査対象の建物条件は?
検査の対象は建物の用途により異なりますが、その用途に使用する部分の床面積が200㎡以上の一定以上の規模の建物が対象です。建物の検査対象は、主に①建物の用途、②建物の規模、③特定行政庁ごとの条件によりカテゴリーされます。
詳細は各特定行政庁のホームページで確認することができます。
まとめ
今回の記事では、建築設備定期検査についてどのような検査があるのか、また検査頻度などをご紹介しました。建築設備定期検査は法律で義務付けられており、建物の安全を確保するために重要な検査です。定期的な検査を実施することで不備を早期に発見でき、重大な事故の予防に繋がります。
また、検査の頻度を守ることにより、設備の長寿命化や維持管理コストの削減も期待できます。 今回の記事を参考に弊社へ建築設備定期検査の相談をご検討いただけると幸いです。
建築設備定期検査のご相談はこちら