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飲食店開業前に必要な水質検査とは?井戸水・貯水槽水を使う飲食店必見!
水質検査・分析/各種環境分析

飲食店開業前に必要な水質検査とは?井戸水・貯水槽水を使う飲食店必見!

2024.09.09

  • 飲料水水質検査

飲食店経営において、水質管理は欠かせない要素であることをご存じでしょうか。保健所から営業許可を得る際、水質検査報告書の提出を求められるケースがあります。

飲食店では調理や洗浄に大量の水を使用し、水質が食品の安全性に直結するためです。特に、井戸水や貯水槽水を使用する店舗では、水質検査が必須となる場合が少なくありません。水質基準を満たしていない水を使用すると、食中毒の原因となる細菌が混入するリスクが高まるだけでなく、営業許可が下りない可能性もあります。

そこで本記事では、飲食店経営における水質検査の必要性や、具体的な検査項目、検査方法について詳しく解説します。安全で衛生的な食品提供の第一歩は、適切な水質管理から始まります。開業を控えている方や、既存店舗で水質管理を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。

どのような場合に水質検査が必要?

開業するお店で貯水槽水(タンク水)や、井戸水を飲食店の調理用・飲用・洗浄用などに使用する場合は、水質検査結果報告書が必要となります。ただし、1年以上経った報告書は受理されません。また、水道から直接供給される水(直結給水方式)を使用する場合は、水質検査が不要となります。

【貯水槽水/井戸水の場合】→水質検査が必要
【直結給水方式の場合】→水質検査不要

水質検査が必要となるケース

飲食店経営において水質検査が求められるのは、調理や洗浄に使用する水が「水道事業者の管理下にない水」の場合です。

たとえば、建物に直接給水されている水道水(直結給水)のみを使用している場合は、原則として営業許可申請時に個別の水質検査成績書は求められません。

一方で、貯水槽を経由した水は、元は水道水であっても、貯水槽以降は水道事業者の管理外となります。また、井戸水は地下水をくみ上げた水であり、水道事業者の管理下にない水として扱われます。そのため、飲食店の営業に使用する水の安全性が確保されているかを確認する目的で、営業許可申請時に「水質検査成績書」の提出が必要になります。
この「水質検査成績書」とは、使用する水が適正な水質であることを証明する検査結果のことです。保健所への営業許可申請で必ず求められる書類です。

貯水槽水については、通常ビル管理会社や管理組合が定期的に水質検査を実施しています。ただし、飲食店として営業許可を取得する際には最新の検査結果を確認し、1年以内に実施していない場合は水質検査を実施しましょう。水質に問題がないことを自店の責任でも把握・説明できようにしておくことが大切です。

水質検査が不要となるケース

直結給水方式で水道水を使用する場合、水質検査は不要です。戸建て住宅や直結給水方式のビルでの営業ならば、基本的に水道水を利用するため、水質検査の必要はありません。

ただし、水道メーターから蛇口までの配管や、浄水器などの給水装置には、事業者自身が管理する責任があります。装置の劣化による水質悪化を防ぐため、定期的な点検や任意の水質検査を実施し、衛生管理を徹底しましょう。

開業前は、どんな検査をすればいい?

貯水槽水、もしくは井戸水を使用する場合は、下記の検査が必要です。井戸水の場合には、新規開業時のみ26項目の検査が必要ですが、その後は年に1回11項目の水質検査が必要となります。

貯水槽水 <11項目>基準値
①一般細菌1mlの検水で形成される集落数が100以下(CFU/mL)
②大腸菌検出されないこと
③亜硝酸態窒素0.04mg/L以下
④硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素10mg/L以下
⑤塩化物イオン200mg/L以下
⑥有機物(全有機炭素(TOC)の量)3mg/L以下
⑦pH値5.8以上8.6以下
⑧味異常でないこと
⑨臭気異常でないこと
⑩色度5度以下
⑪濁度2度以下
井戸水
<新規開業時:26項目、その後は年に1回11項目の水質検査が必要>
基準値
①一般細菌1mlの検水で形成される集落数が 100以下(CFU/mL)
②大腸菌群検出されないこと
③硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素 10mg/L以下
④塩化物イオン200mg/L以下
⑤有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)10mg/L以下
⑥pH値5.8以上8.6以下
⑦味異常でないこと
⑧臭気異常でないこと
⑨色度5度以下
⑩濁度2度以下
⑪カルシウム・マグネシウム等(硬度)300mg/L以下
⑫フッ素0.8mg/L以下
⑬鉛0.1mg/L
⑭亜鉛1.0mg/L以下
⑮鉄0.3mg/L以下
⑬銅1.0mg/L以下
⑰蒸発残留物500mg/L以下
⑱マンガン0.3mg/L以下
⑲六価クロム0.05mg/L以下
⑳カドミウム0.01mg/L以下
㉑シアン(シアンイオン及び塩化シアン) シアンの量に関して、0.01mg/L以下
㉒水銀0.0005mg/L以下
㉓ヒ素0.05mg/L以下
㉔フェノール類フェノールとして0.005mg/L以下
㉕陰イオン界面活性剤0.5mg/L以下
㉖有機リン0.1mg/L以下

※注意1※
営業許可後も年1回以上の水質検査と報告書の保管が必要になります。

※注意2※
上記の項目(11項目・26項目)は一般的に営業許可のために必要な検査項目です。
自治体により検査項目が異なる場合がありますので、詳細は事前に施設の所在地を管轄する保健所にお問い合わせください。

飲料水の水質検査詳細はこちら

水質検査をする方法

飲食店開業を控えている方や、既に営業中の店舗で水質管理を徹底するには、日常的に自主検査と法定検査を両方実施することが重要です。法律で義務付けられた水質検査は、年に1回以上の頻度で行う必要がありますが、その間に水質が変化する可能性があります。料理の品質や安全性に影響を与えないよう、毎日の簡易検査を習慣化しましょう。

官能検査の実施方法

官能検査とは、人間の感覚器官(目・鼻・口など)を使って水質の異常を確認する簡易的な方法です。蛇口から30秒ほど水を流し、透明なコップに採取して、濁り・におい・色・味の4項目に異常がないかをチェックします。実施後は必ず結果を記録しましょう。


飲食店で井戸水や貯水槽水を使用する場合、法定検査と併せてこのような日常チェックを習慣化することで、水の状態変化を早期に発見し、迅速に対応することが可能になります。 なお、官能検査はあくまで初期チェックであり、異常を感じたら専門の水質検査機関による詳細な検査を必ず実施してください。

残留塩素濃度の測定

水道法施行規則では、蛇口から出る水において遊離残留塩素を「0.1mg/L以上」に保つ塩素消毒が定められています。飲食店で 井戸水や貯水槽水を使用する場合も、調理や洗浄に使用する水の安全性を確保する観点から、消毒状況や残留塩素の管理を意識した運用が重要です。

そのため、調理を始める前に残留塩素を簡易測定キットで確認し、殺菌装置・浄水装置の稼働状況を毎日チェック、さらに貯水槽の場合は水の長時間滞留を避けるための循環頻度の見直しなども推奨されます。
これらの管理は、法律で一律に「毎日実施」が義務付けられているものではありませんが、 HACCPに基づく自主衛生管理として、安全な営業環境を維持するうえで重要な取り組みとされています。

専門機関による法定検査

自主検査のみならず、専門の検査機関に依頼する法定検査も必須です。貯水槽水や井戸水を利用する店舗は、定期的に水質検査を受けなければなりません。検査項目には、前述のとおり一般細菌・大腸菌・塩化物イオン・pH値などの項目が含まれます。

都道府県知事の登録を受けた「登録水質検査機関」、「建築物飲料水水質検査業」登録事業者に検査を依頼しましょう。検査結果は必ず保管し、保健所の立ち入り検査時にすぐ提示できるよう、準備しておきましょう。

なお、水質検査成績書の有効期限は1年間です。期限切れといった事態を避けるためにも、更新時期には気を付けましょう。

営業開始前に水の異常が見られた際の対処法

日常的な官能検査や残留塩素検査で異常を発見した場合は、速やかに営業をストップしてください。水質に問題がある状態では、安全な商品を提供できないためです。水の異常が確認されたときは、使用している水源の種類に応じて適切に対応しましょう。以下では、水源別の具体的な対処法を解説していきます。

水道水を使用している場合

水道水に異常を発見したら、まずは管轄の水道局に連絡してください。水道局が原因を調査し、適切な指示を出してくれます。

ただし、建物内の水道管に問題がある場合は、水道局の管轄外です。配管の老朽化や破損が原因で水質が悪化しているケースならば、施設管理会社や建物のオーナーに連絡をしましょう。配管の点検や修理を依頼し、水質異常の原因を解消する必要があります。

水道メーターから蛇口までの給水装置は事業者の管理責任となるため、定期的なメンテナンスが必要です。

貯水槽水を使っている場合

貯水槽の管理責任は設置者(建物のオーナーまたは管理者)にあります。水道管を通ってきた水道水の水質については水道事業者が供給までの責任を負いますが、貯水槽に入った後の水や貯水槽そのものの衛生管理は設置者側の責任となります。万が一、槽内の水に「濁り・におい・味の異常」などが発生したら、原因が水道水の供給段階なのか、槽内・配管等の汚染なのかを速やかに判断・対応する必要があります。その際には、まず保健所または建物の管理担当に連絡し、必要に応じて水質検査や槽内点検・清掃を専門業者に依頼しましょう。

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井戸水を使用している場合

井戸水に異常が見られた場合も、直ちに使用を中止しなければなりません。専門の検査機関に依頼し、汚染原因を調査してもらう必要があります。井戸水自体ではなく、浄水器や殺菌装置の故障が原因の可能性もあります。機器に破損や損傷がないかを確認し、異常があればメーカーに問い合わせてください。

また、地震や豪雨などの災害後は、特に注意が必要です。災害によって井戸が枯れたり、地下水の水質が変化したりすることがあるためです。日頃から水質の変化に注意し、少しでも異常を感じたら、迅速に対応する体制を整えておくことが大切です。

まとめ│飲食店開業前に押さえておきたい水質管理

飲食店経営において、水質管理は食の安全を守る上で、もっとも基本的かつ大切なことです。そこで本記事では、開業前に必要な水質検査の全体像を解説しました。

貯水槽水や井戸水を利用する場合は、営業許可申請時に水質検査成績書の提出が義務付けられています。一方、直結給水方式で水道水を使用する場合は、水質検査は不要です。ただし、給水装置の維持管理は事業者の責任となるため、定期的な点検を怠らないようにしましょう。

また、水質異常を発見した際は、直ちに営業を停止し、水道水・貯水槽水・井戸水、それぞれの水源に応じて、適切な機関に連絡して対処しましょう。

安全な料理を提供し続けるためには、水質管理を徹底することが飲食店経営の成功につながります。開業前の準備段階から、正しい知識を持って水質検査を実施しましょう。弊社では、豊富な水質分析メニューをご用意しています。水質分析・管理でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

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