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マンションの消防設備点検とは?点検内容や頻度、違反時の罰則など
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マンションの消防設備点検とは?点検内容や頻度、違反時の罰則など

2025.05.26

  • 設備点検
  • 消防設備点検

マンションに住んでいる方や管理している方にとって、消防設備点検は生活と安全を守るために欠かせない重要な作業です。しかし、点検の具体的な内容や頻度、また点検を怠った場合の罰則について詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。今回の記事でマンションの消防設備点検について徹底的に解説します。

マンションの消防設備点検とは

マンションの消防設備点検とは、居住者の安全を守るために消防設備の適切な管理や維持を目的として実施される点検です。万が一火災が起きた場合にも迅速に対応できる状況を整えるために大変重要です。

マンションは多くの人が生活の場として利用するため、ひとたび火災が発生すると甚大な被害が生じるリスクがあります。そのため、消防設備の点検を定期的に行うことは、生命や財産の保護に直結すると言えるでしょう。

また、適切な消防設備点検を行うことで、火災保険の適用要件を満たし、被害発生時の対応をスムーズに進められるといったメリットもあります。安心して生活するためにも消防設備点検の重要性をしっかり認識することが大切です。

消防設備点検の種類と実施周期

消防設備点検には、以下の2種類があります。

  • 機器点検:6か月に1回実施。設備の外観や簡易操作による機能確認を行います。
  • 総合点検:1年に1回実施。設備を実際に作動させ、総合的な機能を確認します。

マンションの消防設備点検の対象と範囲

対象となる建物の条件

マンションの消防設備点検が必要となる条件は、法律で明確に規定されています。消防法第17条の3の3に基づき、消防設備点検が義務付けられている建物は以下の通りです。

1. 特定防火対象物(延べ面積1,000㎡以上)

不特定多数の人が利用する施設が該当します。例としては、劇場、映画館、ナイトクラブ、飲食店、旅館、ホテル、病院、老人ホームなどが挙げられます。これらの建物では、6か月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検が必要で、点検結果は1年に1回、所轄の消防署へ報告しなければなりません。

2. 非特定防火対象物(延べ面積1,000㎡以上で、消防長または消防署長が指定するもの)

特定防火対象物に該当しない建物でも、延べ面積が1,000㎡以上で、消防長または消防署長が指定した場合は点検が必要です。例としては、共同住宅(マンション)、学校、図書館、博物館、美術館、神社、寺院、工場などが含まれます。これらの建物では、6か月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検が必要で、点検結果は3年に1回、所轄の消防署へ報告しなければなりません。

3. 特定一階段等防火対象物

屋内階段が1つしかなく、1階・2階以外の階に特定用途部分(例:飲食店、物品販売店舗など)がある建物が該当します。避難経路が限られているため、火災時の危険性が高く、厳格な点検が求められます。

4. 全域放出方式の二酸化炭素を消火剤とする不活性ガス消化設備が設置されている防火対象物

消防法施行規則第31条の6により、「二酸化炭素消火設備、ハロン1301消火設備等のガス系消火設備」が設置されている防火対象物の所有者・管理者等は、毎年1回点検を行い、その結果を報告する義務があります。建物の用途や面積は関係ありません。誤作動時の人命への影響が大きいため、厳格な管理が求められます。

点検が必要な設備

消防設備点検では、マンション内に設置されている防火・消火設備が基準に適合しているかを確認することが求められます。

消火設備

消火器

火災発生時に初期消火を行うための設備です。点検では、消火器本体に破損や錆がないか、薬剤の有効期限が切れていないか、圧力計の針が正常な範囲内にあるかを確認します。また、設置位置が容易にアクセス可能であるかも重要なチェック項目です。

  • 消火器:最も一般的な消火設備で、各階や共用部に設置されます。
  • 屋内消火栓設備:建物内に設置された消火栓で、消火活動に使用されます。
  • スプリンクラー設備:火災を感知すると自動的に散水し、消火を行います。
  • 水噴霧消火設備:水を霧状にして放出し、火災を抑制します。
  • 泡消火設備:泡を放出して火災を消火します。
  • 不活性ガス消火設備:酸素を排除して火災を消火します。
  • ハロゲン化物消火設備:ハロンガスを使用して火災を消火します。
  • 粉末消火設備:粉末を放出して火災を消火します。

警報設備

火災報知器の点検

火災を早期に発見し、警報を発するための設備です。各フロアや部屋に設置された感知器や受信機の状態を細かくチェックし、配線や接続に不備がないかも併せて確認します。また、警報が正常に作動するか試験を行うことが求められます。

  • 自動火災報知設備:煙や熱を感知して自動的に警報を発します。
  • ガス漏れ火災警報設備:ガス漏れを感知して警報を発します。
  • 漏電火災警報器:漏電による火災の危険を検知して警報を発します。
  • 非常警報器具・設備:非常ベルやサイレンなど、手動または自動で警報を発する設備です。

避難設備

避難はしご

火災時に安全に避難するための設備です。マンションの構造に応じた仕様の避難はしごが正しく設置されていることや、避難器具が破損していないかを確認する作業が含まれます。

  • 避難器具:避難はしご、救助袋、緩降機など、避難を補助する器具です。
  • 誘導灯・誘導標識:避難経路や非常口を示す照明や標識です。

消火活動上必要な設備

消防隊専用放水口

消防隊が消火活動を行う際に必要な設備です。

  • 排煙設備:煙を排出し、視界を確保します。
  • 連結送水管:消防車から水を供給するための配管です。
  • 非常コンセント設備:消防隊が使用するための電源供給設備です。
  • 無線通信補助設備:消防隊の通信を補助する設備です。
  • 消防用水(防火水槽、消火用井戸等)

消防点検の流れ

マンションの消防設備点検を適切に実施するためには、点検の依頼から報告、さらには必要な改修作業までの流れを明確に理解しておくことが重要です。

依頼

消防設備点検を開始する第一歩は、専門業者への点検依頼です。法律に基づき、消防設備士または消防設備点検資格者の資格を有する専門家による点検が必要となります。

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点検

次に、実際の点検作業が行われます。「機能点検」と「総合点検」の2種類に分類して点検を行います。

報告

点検が終了した後、業者から報告書が提出されます。この報告書には、点検内容、結果、そして必要に応じた改善提案が詳しく記載されています。報告書は消防署への定期報告にも活用され、法律で義務付けられた報告を行うための重要な資料となります。

改修

点検結果に基づき、設備の問題点が発見された場合には、改修作業が必要となります。改修作業では、報告書に記載された不備箇所を中心に作業を進めます。この作業は、住民の生活を妨げない範囲で慎重に計画されなければなりません。

以上が「依頼」から「点検」「報告」、そして「改修」までの流れです。

消防設備点検を怠った場合の罰則

マンションにおける消防設備点検は、法令に基づく厳密な義務となっており、これを怠った場合には様々な罰則が科される可能性があります。

消防設備の設置命令違反

消防設備は建物の種類や規模に応じて設置が義務付けられています。この義務を履行しなかった場合、「設置命令違反」に該当します。消防設備の設置命令に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

点検報告義務違反

消防設備点検の結果を報告しない、または虚偽の報告をした場合も点検報告義務違反として30万円以下の罰金または拘留となります。点検自体を実施していない場合や点検期間のルールが守られていない場合も、点検報告義務違反に該当することがあります。

まとめ

今回の記事では、マンションの消防設備点検についてご紹介しました。

マンションの消防設備点検は、法律に基づいた義務であり、住民の安全を守るために非常に重要な手続きです。自動火災報知設備や消火器、避難器具などの設備が正常に機能するかを定期的に確認し、6か月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検、点検結果は3年に1回所轄の消防署へ報告が必要です。

これを怠ると、消防法違反として罰則を受ける可能性があり、最悪の場合には命や財産を損失するリスクが生じます。マンション所有者および管理者には、適切な業者に依頼し、確実に点検を実施する責任があります。 今回の記事を参考にマンションの消防設備点検を見直してみてはいかがでしょうか。

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