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特定建築物定期調査とは?対象となる建物と調査項目について
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特定建築物定期調査とは?対象となる建物と調査項目について

2025.05.30

  • 設備点検
  • 特定建築物定期調査

特定建築物定期調査は、建物の安全性を確保し、法令を遵守するために必要な定期的な点検制度です。この調査は、建物の利用者や周辺環境の安全を守ることを目的としており、特定の条件を満たす建物が対象となります。特定建築物定期調査の概要から、対象となる建物や調査項目について、解説いたします。

特定建築物定期調査とは

特定建築物定期調査とは、建築基準法に基づいて行われる、一定の規模や用途の建築物を対象とした定期的な調査です。この制度は、建築物の安全性を維持し、公共の安全を確保するために設けられており、特に、不特定多数の人が利用する建物や、規模が大きい建築物を中心に実施されています。

特定建築物定期調査は、建築基準法第12条に基づいて行われます。この法律では、建築物の所有者や管理者に対して、定期的な点検を行う義務が課されています。点検の実施状況や結果については、特定行政庁に報告することが求められており、未実施や不備が確認された場合には、行政指導や必要な措置が取られる場合もあります。

また、調査の実施にあたっては、一級建築士または二級建築士、または特定建築物調査員資格者証の交付を受けた者が行うことになっています。これにより、調査の精度や信頼性が確保されています。さらに、調査結果を記録する報告書では、建築物の現状や改善が必要な箇所が明確に記載されるため、所有者や管理者が適切なメンテナンスを進めるための指針ともなります。

建築基準法第12条が定める4つの定期点検

建築基準法第12条は、建築物の安全性を確保するために定められた重要な規定です。この規定に基づき、建築物の規模や用途に応じた4つの定期点検と報告義務が設けられています。これらは「12条点検」と呼ばれ、建築物だけでなく、設置物や設備も対象に含まれます。

1. 特定建築物定期調査

特定建築物定期調査は、本記事全体のテーマでもある特定建築物を対象とした制度です。不特定多数の人々が利用する建築物の安全性維持のために実施されます。敷地及び地盤、建築物の内部・外部、屋上及び屋根、避難施設・非常用進入口などの点検を行います。

2. 建築設備定期検査

建築設備定期検査は、主に建物内部の安全性と機能性を確保することを目的として実施されます。検査対象設備は、給排水設備、換気設備、非常照明装置、排煙設備の4つです。

建築設備定期検査の対象となる設備は、日常使用される部分が多いため、定期的な検査を通じて故障や問題箇所を早期に発見し、速やかな修繕が行われることが求められます。

3. 昇降機等定期検査

昇降機等定期検査は、エレベーター、エスカレーターなどの移動設備の安全性確保に焦点を当てた検査です。安全装置の点検、動作確認などを行います。

4. 防火設備定期検査

防火設備定期検査は、防火扉や防火シャッターなどが火災発生時に確実に作動するか、また感知器と適切に連動するかなどを確認するために行われる点検です。

特殊建築物と特定建築物の違いについて

建築物に関する定期的な調査や報告を行う制度には、対象となる建築物の性質や用途に応じてさまざまな区分があります。その中でも「特殊建築物」と「特定建築物」は混同されやすいですが、法律上の定義や扱いが異なります。

分類定義
特殊建築物建築基準法第2条第2項に基づき、特殊な構造や用途を有する建築物として定義されます。具体的には、学校、病院、劇場、博物館、ホテル、共同住宅などの施設を指します。これらは安全性の確保が重要視されるため、建物の構造や防火・避難設備において特に厳格な基準が求められています。
特定建築物特殊建築物を含む建物のうち、以下の2つの基準で指定されます。 ・国が全国一律で定めた建築物 ・特定行政庁が地域の実情に応じ各々で指定する建築物 主に建築基準法第12条に基づき、定期調査および報告が義務付けられます。

特定建築物定期調査の対象となる建物と条件

特定建築物定期調査が必要な建物には、法律で定められた基準が存在しています。この基準をしっかりと理解しないと、調査が漏れたり、必要以上の手続きが発生してしまうことがあります。

国が定める特定建築物は下記の表に該当する建物です。

建物の用途建物の規模・条件など
劇場、映画館、演芸場・3階以上の階にあるもの
・客席床面積が200m2以上のもの
・主階が1階にないもの
・地階にあるもの
観覧場、公会堂、集会場・3階以上の階にあるもの
・客席床面積が200m2以上のもの
・地階にあるもの
病院、有床診療所、旅館、ホテル、就寝用福祉施設※・3階以上の階にあるもの
・2階床面積が300m2以上のもの
・地階にあるもの
体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場 ※いずれも学校に附属するものを除く・3階以上の階にあるもの
・床面積が2,000m2以上のもの
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、物品販売業を含む店舗・3階以上の階にあるもの
・2階床面積が500m2以上のもの
・床面積が3,000 m2以上のもの
・地階にあるもの
※就寝用福祉施設とは
サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホーム、助産施設、乳児院、盲導犬訓練施設、救護施設、各種老人ホームなど、利用者の避難上の安全を確保する観点から、定期報告の対象として指定されています。

特定行政庁が指定する特定建築物は、各特定行政庁のホームページなどで確認が必要です。

特定建築物定期調査の調査項目

特定建築物定期調査の実施には、建物の安全性を確認するためにさまざまな視点から調査が行われます。調査項目は大きく「敷地及び地盤」「建築物の内部」「建築物の外部」「屋上及び屋根」「避難施設・非常用進入口」に分類され、それぞれの詳細についてご紹介します。

敷地及び地盤の調査

敷地及び地盤の調査では、建物が建つ土地やその周辺環境が、安全性や耐久性にどのように影響するかを確認します。具体的には、以下の内容が対象となります。

対象主な調査内容
敷地敷地の排水状況:
・雨水や生活排水が敷地内に溜まっていないか
・排水溝や側溝の詰まり・破損などがないか
・周辺地盤との高低差により、雨水が建物側に流れ込む構造になっていな いか
通路・動線の安全性:
・建物までのアプローチ(歩道、車道、駐車スペース等)が安全に利用可能か
・目立つ陥没や路面のひび割れがないか
敷地境界の安全性:
・塀やフェンスが傾いていないか、崩落の恐れがないか
・境界に設置された擁壁(がけなどの補強構造)が適切に維持管理されて いるか
障害物・危険物の有無:
・敷地内に危険なものが存在しないか
・ゴミや資材などが放置されていないか
避難経路の確保:  
・火災・地震等の緊急時に安全に避難できる動線が確保されているか  
・出入口や避難路に車や植栽、物置などが障害物として存在していないか
地盤不同沈下(ふどうちんか)の兆候:
・建物の一部が沈んでいる、または傾いているような現象の兆候があるか
・建物周囲の地面に段差、隆起、亀裂、ひび割れがないか
地盤の陥没・沈み・ゆるみ:  
・地盤に局所的な陥没が発生していないか  
・排水不良によって地盤が長期的に軟弱化していないか

建築物の内部の調査

建築物内での安全性や機能性を確認するため、構造や仕上げ部分についての調査が行われます。

調査項目内容
構造材柱や梁などの構造材が劣化していないか、またひび割れや変形、腐食がないか
内装仕上げ壁や天井、フロアの仕上げ部分で剥がれや破損、劣化がないか
照明器具錆びや腐食、変形などがないか、落下の危険がないか
換気設備換気設備の動作に異常がないか

建築物の外部の調査

建築物の外側についての調査では、雨風にさらされる部分や建物の外観全体の状態を確認します。

調査項目内容
基礎や外壁ひび割れ、剥離、タイルの浮きや落下の危険性がないか
サッシや窓腐食や変形、作動不良がないか

屋上及び屋根の調査

屋上や屋根の状態は、建物全体の耐久性や防水性能に直結します。

調査項目内容
屋上ひび割れ、反り返り、伸縮目地の損傷、雑草の繁茂などがないか
屋上設置物冷却塔や高置水槽などがしっかり固定されているか、本体や固定部に錆びがないか
屋根屋根のふき材などに損傷や欠損がないか

避難施設・非常用進入口の調査

避難施設や非常用進入口は、万が一の際に人命を守るため必要不可欠な設備です。

調査箇所調査内容
避難経路や出入口の幅員最低限の幅があるか、障害物がないか
非常用扉異常なく開閉できるか、ドアの前が障害物で塞がれていないか
排煙設備正しく設置され、作動するか
階段施行令による幅の確保や障害物の有無、手すりの設置状況

特定建築物定期調査の流れ

特定建築物定期調査を適切に実施し、法令遵守を確保するためには、その流れを正確に把握することが重要です。通知の確認から報告書の提出まで、一般的な特定建築物定期調査の流れを分かりやすく説明します。

特定行政庁から通知の確認

特定建築物定期調査は、「特定行政庁」から所有者や管理者に対して通知が行われることで開始します。特定行政庁とは、建築基準法の運用・執行を行う地方公共団体の長(行政機関)を指します。この通知には、調査が必要である旨や対象建築物の情報が記載されています。

通知を受け取った建物管理者は早急に内容を確認し、調査のスケジュールを立てる必要があります。通知を見逃すと、法令違反となり罰則対象となる可能性があります。

点検業者に依頼

通知を確認した後、次に行うべきことは資格を有する建築物調査員が在籍している点検業者に調査を依頼することです。次のいずれかの資格を持つ人が特定建築物定期調査を実施できます。

  • 一級建築士または二級建築士
  • 一定の講習を修了し、国から特定建築物調査員資格者証の交付を受けたもの

調査の実施

調査の実施は、建物現地での詳細な点検作業を含みます。すべての点検項目が法令に基づき厳格に行われ、建物の安全性と使用に適した状態が評価されます。

報告書を作成

調査が終了したら、点検業者が報告書を作成します。報告書は現状の建物状態を正確に反映したものである必要があるため、調査員による適切な記述が求められます。

報告書を特定行政庁に提出

最後に作成された報告書を特定行政庁へ提出します。報告書が適切に提出されない場合、監督機関からの指導や是正命令につながる可能性があります。

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まとめ

今回の記事では、特定建築物定期調査について詳しく解説いたしました。 特定建築物定期調査は、建築基準法第12条に基づいた重要な点検・報告制度であり、特定建築物の安全性確保を目的としています。調査の対象は、多くの人が利用する公共性の高い建物が中心であり、調査項目には敷地や建物内部、避難施設など多岐にわたります。

特定建築物定期調査に関するご相談は、ぜひアムコンへお問い合わせください。

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