汚泥処理に関する法律について、以下のような悩みを抱えていませんか?
・廃棄物処理法の規制内容が分かりにくい
・自社で発生した汚泥の適切な処理方法を知りたい
・法律違反による罰則の内容を知りたい
汚泥処理に関する法律は複雑なため、専門知識を知らずに処理を行うと、トラブルを招きかねません。汚泥は廃棄物処理法で厳しく規制されており、違法な処理は罰則を受ける可能性があるためです。
そこで本記事では、廃棄物処理法の基礎知識から、適切な処理方法、排出量を削減する方法まで、分かりやすく解説します。汚泥処理においては、廃棄物処理法を正しく理解し、専門業者との連携により適切な処理を行うことが重要です。法令を順守した安全な汚泥処理ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。
目次
汚泥処理に要する法律と概要
汚泥の処理には、複数の法律が関わっており、排出事業者は厳格な規制に従って、適正な処理を行う必要があります。そこで、もっとも重要な法律が廃棄物処理法です。廃棄物処理法では、汚泥を「産業廃棄物」として位置付けています。
廃棄物処理法における汚泥の定義
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)では、汚泥を「事業活動に伴って生じた泥状の廃棄物」と規定しています。具体的には、工場排水処理施設から出る汚泥、建設現場で発生する建設汚泥などです。
汚泥は産業廃棄物20種類のうちの1つとして位置付けられており、産業廃棄物全体の42.2%*を占めるもっとも排出量の多い廃棄物です。廃棄物処理法第2条第4項では「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ」などと列挙されています。このように、法的な処理義務が明確化されていることを理解しておきましょう。
*参考:環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書令和5年度速報値(概要版)」
排出事業者責任の原則
廃棄物処理法では、排出事業者責任という概念が確立されています。これは、汚泥を排出した事業者が、最終処分まで一貫して責任を負うという考え方です。単に処理業者に委託すればよいのではなく、適正な処理が確実に行われるよう、監督する義務があります。
排出事業者は、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付、処理委託契約書の作成、処理施設の現地確認など、法定で定められた義務を履行しなければなりません。これらを怠った場合や、処理業者の不法投棄などが発覚した際には、排出事業者も責任を問われます。
汚泥の分類と適用される法律
汚泥処理に関わる法律は、汚泥の発生源や性質によって異なります。主な分類と適用される法律は、以下のとおりです。
汚泥の分類と適用される法律
| 汚泥の種類 | 適用される法律 | 管理者 | 
|---|---|---|
| 下水汚泥 | 下水道法 | 下水道管理者 | 
| 工場排水汚泥 | 廃棄物処理法 | 排出事業者 | 
| 建設汚泥 | 廃棄物処理法 | 建設業者 | 
| 浄化槽汚泥 | 廃棄物処理法 | 施設管理者 | 
下水道管理者が自ら行う下水汚泥の処理に対しては、下水道法が適用されるため、産業廃棄物法の規制対象外です。一方、工場や事業場から発生する汚泥は、廃棄物処理法の対象となり、厳格な処理基準が適用されます。
処理基準と技術基準
廃棄物処理法では、汚泥処理施設の構造や運転に関して、詳細な技術基準が定められています。汚泥は性状に応じて、脱水・乾燥・焼却・埋立などの方法で処理されます。特に焼却処理では、温度や滞留時間などの条件が法令で規定されており、これらを満たさない処理は法律違反です。
最終処分場(産業廃棄物の埋め立て処分場)を設置するには、廃棄物処理法に基づき、管轄する都道府県知事の許可が必要です。埋め立て処分は、こうした許可を受けた施設で、法定の技術基準に従って行わなければなりません。
処理施設の許可制度
最終処分場と同様に、汚泥処理施設の設置・運営にも、事業者は都道府県知事の許可を受ける必要があります。許可にあたっては、処理能力や処理方法に応じて施設基準が定められ、構造、維持管理、周辺環境への配慮について、厳格な審査が行われます。
また、許可を受けた施設には定期的な報告義務があり、処理実績や維持管理状況を行政に報告しなければなりません。また、施設の変更や廃止についても、事前の許可・届出が必要です。
自社で発生した汚泥の処理
ここでは、自社で発生した汚泥の処理方法と、罰則について詳しく見ていきます。
①自社の土地でも設置許可がない汚泥の埋め立てはできない
②廃棄物処理法の罰則
①自社の土地でも設置許可がない汚泥の埋め立てはできない
産業廃棄物処理施設を設置するに当たり、都道府県による処理施設設置許可を取得する必要があります。許可対象となるのは、たとえば汚泥の脱水施設(10m³/日超)や乾燥施設、焼却施設など、一定規模を超える施設です。許可を得た施設のみが、法律で定められた技術基準・構造基準・維持管理基準に従って合法的に運用できます。
たとえ自社の土地であっても、許可なしに汚泥を埋め立てることは違法です。もし違反した場合、懲役や高額な罰金が科せられることもあります。また、設置許可申請には、地方自治体の条例に基づく事前協議や、生活環境影響調査の提出が必要です。
こうした制度は環境保全や周辺住民の生活環境に対する配慮がなされているかどうかが目的となっており、事業者は法令順守と適切な管理体制の構築を求められます。汚泥脱水機の導入なども含め、効率的かつコンプライアンスの遵守が重要です。
②廃棄物処理法の罰則
廃棄物処理法に違反した場合は、刑事罰が科される可能性があります。特に許可なく産業廃棄物の投棄・焼却を営業的に行った場合は重い処罰対象となります。
【法人に対する罰則】
例えば、不法投棄・不法焼却を行った法人については、通常「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科」が規定されており、法人が業務として行った場合には「3億円以下の罰金」が適用されることがあります。企業の社会的責任を重視する現代において、この処罰は経営に甚大な影響を与えるでしょう。 
汚泥処理においても、これらの法律を順守することは企業の責務です。適切な処理業者へ委託したり、必要な許可を確認・取得したうえで処理を行うことが、法令違反を防ぐために欠かせません。
汚泥の廃棄量を削減する方法
汚泥処理の法律を順守しつつ、コストを抑制するためには、汚泥の減容化がもっとも効果的な方法です。生物処理で発生する余剰汚泥は、含水率が99%以上と極めて高く、そのまま処分すれば多額の費用が発生します。
【汚泥脱水機による減容効果】
汚泥脱水機を導入することにより、固液分離によって汚泥のかさを大幅に減らすことができます。汚泥は、脱水処理で「脱水ケーキ」と呼ばれる半固形状となることで、運搬や処分作業が容易となります。一般的に余剰汚泥の減容率は汚泥脱水機で約95%以上であるため、処分コストの大幅な削減が可能です。
【汚泥濃縮機の活用方法】
排水処理施設が地下にあり、脱水ケーキにすると排出が難しい場合などには、汚泥を液状のまま減容できる「濃縮」という処理が最適です。バキューム搬出が可能な濃縮汚泥にすることで、搬出汚泥量を削減することができます。なお、汚泥濃縮機による減容率は約88%以上です。
【環境配慮と循環利用】
濃縮・脱水によって分離された水は、排水処理工程に戻され、適切に処理された後に河川へ放流されます。このサイクルにより、自然環境への負荷を最小限に抑えられ、持続可能な汚泥処理が可能となるのです。
まとめ|汚泥処理の法律を正しく理解しよう!
汚泥処理の法律順守は、企業経営における重要な責務です。廃棄物処理法に基づく適切な処理を怠ると、刑事罰が科される可能性があります。
また、自社敷地内でも無許可の埋立は禁止されており、必ず許可を得た処理業者への委託が必要です。汚泥は産業廃棄物として分類されるため、マニフェストの発行や、適切な処分方法の確認も欠かせません。
なお、汚泥脱水機の導入により、処分量を95%以上削減できることから、処理コストの大幅な軽減に期待できるでしょう。同時に、適切な減容処理は環境負荷の低減にもつながります。汚泥処理に関するご相談は、ぜひ弊社までお気軽にお申し付けください。
    
