工場や事業所からの排水には、適切な処理をしなければ、有害物質や汚染物質が含まれる恐れがあります。そのまま排水すると、河川や海の汚染につながり、生態系や健康に深刻な影響を及ぼしかねません。
そこで本記事では、排水処理設備の概要をはじめ、目的や種類、基本的な仕組み、処理工程まで詳しく解説します。 排水処理設備は段階的な処理工程を経て排水を浄化しており、特に汚泥処理は処理機能を安定的に維持するうえで欠かせない工程です。排水を浄化する仕組みを知り、安全な水へと変えていく大切さを理解できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
排水処理設備の概要
排水処理設備とは、工場や事業所、家庭から出る汚れた水を公共用水域へ安全に放流できる水準まで処理するための設備です。
排水には有害物質や汚染物質が含まれているため、そのまま放流してしまうと、環境汚染や生態系への悪影響を引き起こします。排水処理設備は、複数の処理工程を経て、水質基準を満たす水へと浄化する役割を担っています。
以下では、排水処理設備の構成要素、排水処理の目的、排水の種類について詳しく見ていきましょう。
排水処理設備の構成要素
排水処理設備は、複数の機器や設備を組み合わせて構成されています。主な構成要素は、受け入れ槽・処理槽・ポンプ・ブロワー・配管・計測機器などです。
受け入れ槽は排水を一時的に貯留し、処理量を調整する役割を果たします。処理槽では実際の浄化作業を行い、ポンプは排水や汚泥を移送する装置です。また、ブロワーは曝気槽に酸素を供給し、微生物の活動を支えます。
計測機器には、pH計・DO(溶存酸素)計・流量計などの種類があり、水質や処理状態を常時監視しています。これらの機器を連携させることにより、効率良く排水処理ができるでしょう。なお、設備の規模や処理対象となる排水の特性により、構成は異なります。
排水処理の目的
排水処理のもっとも重要な目的は、公共用水域の水質汚染を防ぎ、環境基準を達成することです。排水中には、有機物・窒素・リンといった汚濁物質が含まれています。これらの有機物は、微生物による分解過程で水中の溶存酸素を消費するため、魚類をはじめとする水生生物に深刻な影響を与えるおそれがあります。
また、窒素やリンが過剰に流入すると、富栄養化が進み、赤潮やアオコの発生原因となることもあります。
さらに、適切な処理をせずに有害物質を含む排水を放流すると、人の健康や生態系全体に重大な被害をもたらす可能性があります。排水処理は、水質汚濁防止法などの法令で定められた基準に基づき、汚濁物質や有害物質を除去・無害化する役割を担っています。 適切に処理することで、河川や海の水質を保全し、持続可能な水環境の維持に貢献できるでしょう。
排水の種類
排水は主事業活動から出る「工場排水」と、日常生活から出る「生活排水」に区分できます。
工場排水は、業種によって含まれる成分が大きく変わるのが特徴です。食品製造施設では有機物濃度の高い水が発生し、金属を扱う工場では重金属類を含んだ水が排出される傾向にあります。業態ごとに異なる性質を持つため、処理方法の選定には注意が必要です。
一方、生活排水は、住宅の台所や浴室、トイレなどから日々排出される水のことです。成分は比較的安定していますが、朝夕の使用時間帯で排出量や濃度に変化が生じる傾向にあります。 排水処理設備を導入する際には、扱う排水がいずれかに該当するか明確にし、特性を踏まえた設計をすることが求められます。
排水処理設備が必要な理由
排水処理設備が必要とされる理由は、以下の2つです。
- 法令順守の観点
- 資源の有効活用
それでは、詳しく見ていきましょう。
法令順守の観点
法令順守の観点からも、排水処理設備は必須といえます。水質汚濁防止法は、公共用水域や地下水の汚染防止を目的とした法律です。工場や事業場から排出される排水には、厳格な規制基準が設けられており、基準を超えた排水を放流すると罰則の対象となります。
企業や事業者は、法令に基づいた適切な排水処理を実施し、水質基準を満たさなければなりません。排水処理設備の導入と適切な運用は、法的義務を果たすのみならず、企業の社会的責任を示す取り組みといえるでしょう。違反による罰則や社会的信用の失墜を避けるためにも、設備の整備は欠かせません。
資源の有効活用
世界的な水不足が深刻化する中、限られた水資源を効率的に活用することが求められています。排水処理設備により適切に浄化された水は、用途に応じた追加処理を行うことで、工業用水や冷却水、農業用水などとして再利用できる場合があります。
また、処理過程で発生する汚泥を肥料や建材へ転用したり、排水中の有機物からエネルギーを回収したりする技術も進展しています。排水処理設備は、水の循環利用を促進し、持続可能な資源管理をする役割を担っています。
排水処理設備の工程
排水処理設備の工程は、以下のとおりです。
- 大きな固形物や油脂類の除去:一次処理
- 生物処理:二次処理
- 高度処理:三次処理
これらの水処理工程とは別に、各段階で発生する汚泥を処理する「汚泥処理工程」が設けられています。

大きな固形物や油脂類の除去:一次処理
一次処理は、排水に含まれる比較的大きな固形物や油脂類を物理的手法により、取り除く工程です。
スクリーン処理:排水中のごみや固形物を分離
スクリーン処理とは、排水の通り道に設けた金網状の設備において、流れに混じる大きな異物や固形物を取り除く工程です。
スクリーンには、開口幅の大きい粗目タイプと細かな目を持つタイプがあり、排水の性状や除去したい異物のサイズで選びます。捕集されたごみは「し渣」と呼ばれ、定期的に掻き上げて、焼却処理や埋め立てなどの方法で適正に処分します。
沈砂池:土砂を沈殿分離
沈砂池とは、排水中の土砂や砂を沈殿させて分離する設備です。排水の流速を緩やかにすることにより、比重の大きい土砂類を底に沈めます。沈殿物はかき寄せ機などを使用し、系外へ排出されて処理されます。沈砂池が下水処理場や工場排水処理施設に設置される目的は、後の処理装置への負荷を軽減するためです。
油水分離:浮上した油を効率よく回収
油水分離は、排水に含まれる油脂類を浮上させ、分離・回収する工程です。油脂類は水より比重が軽いため、排水を静かにしておくと、水面に浮き上がります。自然浮上式や加圧浮上式などの装置があり、排水の特性や処理量に合わせて選定されます。回収した油脂類は、再利用されるケースもあるでしょう。
生物処理:二次処理
二次処理に当たる生物処理は、微生物の働きを利用して、水に溶け込んだ有機物や細かい浮遊物を分解・除去する工程です。
代表的な方法は「活性汚泥法」です。曝気槽で排水に酸素を送り込み、好気性微生物を活発に活動させます。微生物は汚れを餌として摂取し、増殖しながら「フロック」と呼ばれる塊を形成します。その後、沈殿槽でフロックを沈め、きれいになった上澄み水を次の工程へ送る流れです。
生物処理の過程では、増殖した微生物の死骸や塊が大量の「余剰汚泥」として発生します。汚泥処理は、排水処理全体の運転コストの中でも大きな割合を占める重要な課題の一つです。汚泥は水分を多く含み、産業廃棄物として処分するコストが高額となるためです。
このことから、汚泥の水分を絞り取る「汚泥脱水機」や、さらに乾燥させる「汚泥乾燥機」による減容化は欠かせません。目詰まりしにくく、安定して稼働する高性能な脱水機の導入は、メンテナンスコストの軽減につながります。
高度処理:三次処理
高度処理とは、生物処理だけで取り除けなかった微細な浮遊物や、水に溶けている有機物、色、臭気などを除去する工程です。主な処理方法は、以下のとおりです。
凝集沈殿法
ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を添加し、微細な汚れを化学的に結び付けて「フロック」と呼ばれる大きな塊にします。このフロックを沈殿させて分離し、透明度の高い水を得る手法です。
砂ろ過法
砂などが敷き詰められたろ過層に水を通し、残留しているSS(浮遊物質)を物理的にこし取ります。凝集沈殿と組み合わせて、仕上げとして行われるのが一般的です。
活性炭吸着法
微細な穴が無数に空いている活性炭の性質を利用し、臭いの成分や色素、有害物質などを吸着させて除去します。活性炭吸着法は、脱臭や脱色に優れた効果を発揮します。
消毒処理
放流前の最終段階として、病原性微生物を死滅または無害化する工程です。一般的に、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素剤を注入しますが、オゾンや紫外線を用いるケースもあります。
汚泥処理工程
汚泥処理とは、一次処理・二次処理・高度処理の各工程で発生した汚泥を減容化し、安定化させて最終処分する工程です。
排水処理では、水処理系統と並行して汚泥処理系統が設けられており、両者が一体となって機能することで、適正な処理が実現します。
生物処理の過程では、増殖した微生物の死骸や塊が「余剰汚泥」として発生します。汚泥処理は、排水処理全体の運転コストの中でも大きな割合を占める重要な課題の一つです。汚泥は水分を多く含み、産業廃棄物として処分するコストが高額となるためです。 そのため、汚泥濃縮・脱水・乾燥などの工程を通じて減容化を図ります。汚泥脱水機や汚泥乾燥機の導入により、効率的な処理とコスト削減が可能となります。
高度処理に必要な水質管理
高度処理に当たっては、放流先の水域特性や、再利用の目的を考慮しなければなりません。閉鎖性水域へ放流する場合は、富栄養化防止のため、窒素やリンを除去する高度な処理が求められます。処理水を工業用水として再利用するならば、さらに厳しい水質管理が必要です。
処理方法の組み合わせや順序は、排水の性状や達成すべき水質基準によって異なります。例えば、色度や臭気が問題となる場合は、活性炭吸着を優先します。一方、懸濁物質が多い場合は、凝集沈殿と砂ろ過を組み合わせる選択が有効でしょう。定期的な水質分析で処理効果を確認し、必要に応じて運転条件を見直すことが大切です。
専門的な知識に基づいた設計と運用が、効果的な高度処理となるポイントです。以上の工程を経て、排水は環境に悪影響を及ぼさない水となり、公共用水域へ放流されます。なお、高度処理の過程でも汚泥は発生するため、脱水機などで適切に処理する必要があるでしょう。
排水処理設備のメンテナンス
ここからは、排水処理設備のメンテナンスについて、以下の3点をご紹介します。
- 日常点検
- 定期的なメンテナンス
- 異常発生時の対応
日常点検
排水処理設備の性能を維持するには、担当者による毎日の点検作業が欠かせません。日々の変化を敏感に感じ取ることで、トラブルの予兆を早期に発見し、重大な故障や水質基準超過などの事故を未然に防げるためです。
具体的な点検内容としては、五感を使った確認が有効です。ポンプやブロワーなどの回転機器から異音や異常な振動が出ていないか、モーターに発熱がないかを確認しましょう。処理水槽内の水の色や泡立ち具合、特有の臭気がないかも、チェックすべきポイントです。
また、計器類の確認も忘れてはいけません。pH計やDO(溶存酸素)計、流量計の数値が管理基準値の範囲内にあるかを監視しましょう。
スクリーンに詰まったごみの除去や、汚泥脱水機などの機器が正常に稼働しているか、薬品タンクの残量は十分かの確認が必要です。これらの結果を日々記録し、状態を把握しておくことが設備の長寿命化につながります。
定期的なメンテナンス
定期メンテナンスは、設備の長期安定運転には欠かせません。一定の期間で機器を分解・点検し、消耗部品を交換することで性能を保てます。
この定期メンテナンスには、水中ポンプのメカニカルシールを交換したり、ブロワーのフィルターを洗浄したりする作業が含まれます。計器類の校正も重要な作業です。pH計や流量計などの測定機器は、時間の経過とともに誤差が生じやすくなるため、定期的な校正が必要です。
さらに、曝気装置の散気管や配管接続部のチェックも行います。腐食や詰まりが発生しやすい部分のため、早期に発見できるようにしましょう。メンテナンス記録を残すことで、設備の状態を把握しやすくなるはずです。
異常発生時の対応
排水処理設備で異常が起きた際は、迅速な対応が不可欠です。まずは、異常の発生状況を正確に把握し、原因を特定することから始めます。
次に、推測に基づき点検を実施し、原因を特定していきます。処理水の水質悪化が見られる場合、曝気槽の溶存酸素濃度や微生物の状態を確認する必要があるでしょう。ポンプの異常音が聞こえる場合は、軸受けの摩耗やインペラの損傷を疑います。
原因が判明したら、速やかに応急処置を施し、設備を正常な状態に戻すことが重要です。その後、同じ原因でのトラブルが起きないよう、再発予防策を講じます。異常発生時に対応するには、設備の仕組みへの深い理解や、運転管理の十分な知識と経験が求められます。
まとめ|排水処理設備は水質基準を守るために不可欠な設備
排水処理設備は、工場や事業所から排出される汚れた水を浄化し、環境を守るために必要な設備です。一次処理、二次処理、三次処理という段階的な工程を経て、排水は基準値以下の水質となります。
処理工程の中でも、汚泥処理は重要な位置を占めています。処理過程で発生する汚泥を適切に脱水・乾燥させなければ、設備全体の運転に支障をきたすためです。汚泥脱水機や汚泥乾燥機を活用することにより、汚泥の減容化と適正処理が可能となります。
また、排水処理設備を長期間安定して稼働させるには、日常点検と定期メンテナンスが欠かせません。適切な運転管理を心掛けましょう。 排水処理設備や汚泥処理でお困りの際は、汚泥脱水機や汚泥乾燥機に強みを持つアムコンまで、ぜひお気軽にご相談ください。