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汚泥の肥料化とは?注目される循環型資源活用の選択肢
汚泥処理関連装置/水処理用薬品

汚泥の肥料化とは?注目される循環型資源活用の選択肢

2025.03.18

  • 汚泥処理方法
  • 汚泥脱水発酵システム
  • 汚泥乾燥機
  • コスト削減
  • 汚泥の肥料化

汚泥は産業廃棄物として処理されるもので、法律で適切に処理するよう定められています。日本での汚泥の排出量は年間約1億5万4,127万トン(2023年度実績)※にもなり、産業廃棄物の42.2%を占めていますが、この汚泥を適切に処理・再利用することで、持続可能な資源活用が可能となります。

特に、近年では化学肥料の価格高騰を背景に、下水汚泥を活用した肥料化技術が注目を集めています。国土交通省も2023年4月に下水汚泥の肥料利用を拡大する方針を打ち出し、各自治体や企業が取り組みを進めています。

産業廃棄物として処理される汚泥を再利用することで、廃棄物の削減につながります。さらに、化学肥料の使用を抑えることにより、土壌や水質への影響を低減できる点も大きな利点です。

そこで本記事では、汚泥の肥料化のメリットや技術、具体的な活用方法を詳しく解説します。汚泥を適切に処理し、再利用するなど有効に活用するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

※参考:環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書令和5年度速報値(概要版)」

汚泥肥料とは?

汚泥肥料とは、下水処理場や集落排水処理施設から発生する汚泥を適切に処理した有機肥料のことです。汚泥を廃棄せず、有効活用することで、循環型社会の実現に重要な役割を果たします。

汚泥を肥料化するには、複数の工程が必要です。まずは、汚泥を脱水処理して水分調整を行ってから、病原菌を死滅させるため高温で乾燥させるなどの衛生化を行います。その後、安定化・熟成のため発酵させることで、土壌中でガスが発生したり害が出ない状態にし、適切な粒度に調整して肥料となります。

汚泥肥料の主要成分は、窒素・リン・カリウム・有機物などです。これらは植物の健全な成長に不可欠な要素であり、化学肥料と同等以上の効果を期待できます。

汚泥肥料の主要成分と役割

成分植物への効果
窒素葉の成長を促進し、タンパク質合成を活性化させる
リン根の発達を助け、開花・結実を促進させる
カリウム病害虫への抵抗力を高め、品質向上に寄与する
有機物微生物の活性化を促し、土壌肥沃度を向上させる

さらに、環境への配慮も汚泥肥料の大きな特徴といえるでしょう。廃棄物を資源として再生利用することにより、焼却処分時のCO2排出量削減に貢献できます。

汚泥を肥料にするメリット

汚泥を肥料として再利用することには、以下のようなメリットがあります。

(1) 化学肥料の代替としてコスト削減

ウクライナ情勢や中国の肥料原料の輸出検査厳格化等の影響で、化学肥料の価格が高騰しており、農業経営にとって大きな負担となっています。汚泥を利用した肥料は、化学肥料に比べて安価で供給が安定しているため、コスト削減に貢献します。

(2) 環境負荷の軽減

産業廃棄物として処理される汚泥を再利用することで、廃棄物の削減につながります。また、化学肥料の使用を抑えることで、土壌や水質への影響を低減できる点も大きな利点です。

汚泥の肥料化は、循環型社会の実現において重要な役割を担っています。従来、焼却や埋立処分されていた汚泥を有効活用することで、最終処分場の負荷軽減が可能です。また、焼却処理に比べてCO2排出量を大幅に削減できるため、地球温暖化対策にも貢献します。

化学肥料、特に、窒素肥料の製造には高温・高圧プロセスが必要で、多くのエネルギーを消費します。一方、汚泥肥料は廃棄物由来の資源を活用するため、製造に伴う環境負荷の軽減が期待できます。また、窒素肥料の製造や土壌中での反応によりN₂O(一酸化二窒素)が排出されますが、化学肥料の使用量削減により、温室効果ガス排出抑制にも寄与します。

つまり、汚泥を肥料化することで、持続可能な農業の推進と環境保護を両立できるのです。

(3) 土壌改良効果

汚泥由来の有機質肥料には、有機物や微量元素が豊富に含まれており、土壌の保水性や団粒構造の改善に寄与します。そのため、長期的な土壌の健康維持にもつながります。

汚泥肥料のデメリットや危険性

汚泥の肥料化には多くのメリットがある一方、適切な管理を怠ると、深刻な問題を引き起こす可能性があります。安全な利用のためには、これらのリスクを正しく理解することが必要です。

(1) 重金属や有害物質の混入リスク

下水に流入する排水には、工業由来や生活由来の汚染物質が含まれている場合があり、汚泥中に重金属が混入する可能性があります。代表的なものは以下のとおりです。

主要な重金属汚染源

重金属主な発生源
古い配管、塗料、自動車由来
カドミウムメッキ、電池、農薬
水銀医療機器、蛍光灯
六価クロムメッキ、皮革製造

これらが土壌に蓄積すると、植物に吸収され、長期的に健康への悪影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 病原性微生物によるリスク

汚泥には、病原菌やウイルス、寄生虫卵などが存在する可能性があります。適切な衛生処理(高温乾燥、堆肥化など)を行わない場合、以下のリスクがあります。

  • 作業者への感染
  • 農産物への付着による食中毒
  • 土壌環境の悪化

(3) 環境への拡散と二次汚染

汚泥肥料に含まれる物質が飛散や浸透により周辺環境へ影響を及ぼすことがあります。

影響範囲具体的な影響
地下水重金属・硝酸態窒素などによる水質汚濁
河川・湖沼窒素・リンの流出による富栄養化
土壌生態系微生物相のバランスの変化

(4) 不適切な使用による累積リスク

長期間にわたり過剰に使用すると、下記のような問題が起こりえます。

  • 重金属蓄積
  • 窒素・リンの過剰供給 → 水質汚濁

一方で、汚泥肥料は肥料取締法により品質と安全性が管理されており、重金属基準や衛生基準を満たした製品のみが流通します。また、施用量については自治体や関係機関がガイドラインを示しており、適切に利用することで安全性を確保できます。

汚泥の肥料化技術

汚泥を肥料として活用するには、適切な処理が必要です。ここでは、汚泥の肥料化に役立つ主要技術を紹介します。

(1) 汚泥脱水発酵システム「デルコンポ」

汚泥脱水発酵システム デルコンポ

「デルコンポ」は、汚泥の脱水、乾燥、発酵までを一括で処理できるシステムです。このシステムで排出される発酵汚泥は、肥料として活用できます。

※発酵汚泥を肥料として販売または第三者へ配布するには、肥料取締法に基づいた肥料登録が必要です。

発酵汚泥肥料 エコグリーン
デルコンポで発酵させた汚泥を肥料にした「エコグリーン」

処理プロセス

汚泥脱水発酵システムの処理プロセス
汚泥脱水発酵システムの処理プロセス

特長:

  • すべての処理設備がユニット化されており、省スペースで導入可能
  • 水分調整のための副資材(おがくずや稲わらなど)を使用せず、汚泥のみで発酵可能
  • 1996年の発売以来、多くの農業集落排水処理施設で活用されている

(2) 汚泥乾燥機「Kシリーズ」&「SPシリーズ」

汚泥は発酵させなくても肥料になることをご存じでしょうか。 食品工業の活性汚泥法にて生じた汚泥であれば、乾燥処理するだけでも肥料化が可能です。菌体肥料という名称で、下水汚泥と同じ汚泥肥料とは別ものとして扱われるため、安全性の心配や汚泥肥料という名称からくるイメージの悪さもなく、利用化されやすいようです。
食品工業の他にもパルプ工業、発酵工業又はゼラチン工業(なめし皮革くずを原料として使用しないものに限る。)の汚泥も肥料化が可能です。

汚泥乾燥機Kシリーズ(蒸気熱源ドラム式)

汚泥乾燥機Kシリーズ

蒸気を熱源とし、回転する2本のドラムの中央に汚泥を投入することで、汚泥がドラム表面にフィルム状に付着し、乾燥処理されます。

メリット:

  • シンプルな構造でメンテナンスが容易
  • 貯留ホッパや大型の乾燥タンク、モーター等の大規模な運転設備が不要
  • コンパクトで小規模施設にも対応

汚泥乾燥機SPシリーズ(電気熱源ロータリーキルン式)

汚泥乾燥機SPシリーズ

独自の二重ドラム構造を採用し、非常にコンパクトな乾燥システムです。

メリット:

  • 乾燥汚泥はフレーク状で連続的に排出。飛散も少なく、取り扱いが容易
  • 小型で設置が容易
  • 貯留ホッパや大型の乾燥タンク、モーター等の大規模な運転設備が不要

汚泥脱水機ヴァルート™と組み合わせることで、脱水機から排出される脱水ケーキを汚泥乾燥機Kシリーズ、SPシリーズに直接投入し、乾燥ケーキを連続的に排出することができます。

物理化学処理汚泥のコスト削減

産廃処理コスト削減

汚泥の中には、凝集沈殿法などの物理化学処理を施したものもあります。これらは肥料化はできませんが、乾燥処理によって含水率を40%以下にすることで、産廃処理費用を大幅に削減できます。 例えば、年間の脱水ケーキ発生量が800t-WET/年(固形物量120t-DS/年)、脱水ケーキの産廃費を20,000円/tとした場合、 汚泥の含水率を85%から40%にすることで、年間の産廃処理コストを1,200万円削減できます。

まとめ│汚泥を活用した肥料化はメリット・デメリットを理解しよう

汚泥の肥料化には、デメリットもある一方で、廃棄物の削減、農業コストの削減、環境負荷の低減など、多くのメリットがあります。特に、化学肥料の価格が高騰する現在、汚泥を活用した肥料は持続可能な農業の鍵を握る可能性があります。

汚泥脱水発酵システム「デルコンポ」や、汚泥乾燥機「Kシリーズ」「SPシリーズ」にご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。